【専門監修】訪問介護の特定事業所加算とは?Ⅰ〜Ⅴの算定要件・違い・実務チェック
特定事業所加算の取得や区分変更を考えるとき、研修や会議、職員の資格、利用者の状況をどこから確認すればよいか迷うこともあるのではないでしょうか。
訪問介護の特定事業所加算はⅠ〜Ⅴに分かれ、必要な要件の組み合わせが異なります。事業所の規模だけでは決まらないため、共通の体制要件を確認したうえで、自事業所が満たせる区分を見ていきましょう。
この記事では、訪問介護の経営者・管理者・サービス提供責任者に向けて、区分ごとの要件、割合の計算、届出、算定後の点検を解説します。
特定事業所加算の要件を、資料でまとめて確認したい方へ
区分Ⅰ〜Ⅴの違いや届出前の確認事項をまとめたガイドブックをご用意しました。
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訪問介護の特定事業所加算とは
特定事業所加算は、職員の育成や情報共有、人材配置、利用者への対応などの要件を満たし、届出をした訪問介護事業所を評価する加算です。対象となる訪問介護費の所定単位数に、区分に応じた割合を上乗せします。
この記事で扱うのは、介護保険の訪問介護の特定事業所加算です。居宅介護支援や障害福祉サービスにも同名の加算がありますが、要件や計算方法が異なるため、それぞれの基準を確認してください。
Ⅰ〜Ⅴの加算率と算定要件

| 区分 | 加算率 | 主な算定要件 |
|---|---|---|
| 特定事業所加算Ⅰ | 20% | 共通の体制+訪問介護員等の資格割合+サ責の資格・経験等+重度者等または看取りへの対応 |
| 特定事業所加算Ⅱ | 10% | 共通の体制+「訪問介護員等の資格割合」「サ責の資格・経験等」のいずれか |
| 特定事業所加算Ⅲ | 10% | 共通の体制+「サ責の追加配置」「勤続年数の割合」のいずれか+重度者等または看取りへの対応 |
| 特定事業所加算Ⅳ | 3% | 共通の体制+「サ責の追加配置」「勤続年数の割合」のいずれか |
| 特定事業所加算Ⅴ | 3% | 共通の体制+中山間地域等の利用者への継続的なサービス提供+関係者による計画の共同見直し |
※区分ごとの主な要件を編集部で整理しています。「サ責」はサービス提供責任者の略です。人数・割合などの詳しい条件は、後の節で説明します。
Ⅰ〜Ⅳは同時に算定できません。Ⅴは、要件を満たせばⅠ〜Ⅳのいずれかと併算定できます。 ただし、Ⅴと「特別地域訪問介護加算」「中山間地域等における小規模事業所加算」「中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算」は併算定できません。Ⅴを検討する際は、現在算定している地域関係の加算も確認してください。
根拠:訪問介護費・注10、注13〜15(平成12年厚生省告示第19号)、区分ごとの基準・第三号イ〜ホ(平成27年厚生労働省告示第95号)。
Ⅰ〜Ⅴに共通する5つの体制要件

全ての区分で、研修、会議、指示・報告、健康診断、緊急時の対応方法の明示が必要です。まずは、この5つが日々の業務で行われているか、記録とあわせて確認しましょう。
個別研修計画の作成と研修の実施
研修計画は、登録ヘルパーを含む全ての訪問介護員等と、サービス提供責任者が対象です。一人ひとりの計画を作り、計画に沿って研修を実施するか、実施を予定していることが要件です。外部の研修を利用することもできます。
計画には、職員ごとの具体的な目標、内容、研修期間、実施時期などを定めます。事業所全体の研修内容を決め、職員が参加できる勤務体制を確保することも必要です。厚労省Q&Aでは、全員におおむね1年に1回以上、何らかの研修を実施することが示されています。受講回数とあわせて、各職員の目標や受講内容が個別計画に記載されているかも確認しましょう。
| 個別研修計画の項目 | 記入例(架空の職員を想定) |
|---|---|
| 本人の課題 | 認知症の利用者への声かけで、拒否があると対応を判断しにくい |
| 目標 | 訪問介護計画の留意事項を踏まえ、本人の反応に応じた声かけを選び、サ責へ報告できる |
| 内容・方法 | 認知症ケアの研修、事業所内の事例検討、同行時の振り返り |
| 期間・実施時期 | 10〜12月。10月に研修、11月に同行、12月に振り返りを予定 |
| 実施後の確認 | 受講日と内容を記録し、報告記録や面談から到達状況を確認する |
※上記は研修計画の記入例です。研修テーマや実施期間に法定の指定があるわけではなく、職員の経験や役割に合わせて設定します。
計画書を作る際は、個別研修計画の作り方と記入例もご活用ください。
根拠:告示第95号・第三号イ(1)、老企第36号を整理した東京都の留意事項・PDF1ページ、厚労省Q&A集・平成21年3月23日Vol.1問3(PDF3ページ)。
会議はおおむね月1回以上、全員が参加できるように開催する
会議では、利用者の情報やサービス提供時の留意事項を共有し、訪問介護員等への技術指導を行います。サービス提供責任者が主宰し、登録ヘルパーを含む、サービス提供に当たる全ての訪問介護員等の参加が必要です。
開催頻度はおおむね月1回以上です。全員が一度に集まるほか、サ責ごとのグループに分けて開催することもできます。リアルタイムで映像を見ながらやり取りできるテレビ電話等の利用も認められています。いずれの方法でも、開催概要は記録に残します。
会議の記録には、例えば開催日、参加者、共有した留意事項、技術指導の内容をまとめます。職員一覧と参加記録を見比べ、欠席した職員には別日や別グループでの参加を調整しましょう。資料の配付だけで、会議に参加した扱いにはできません。
根拠:特定事業所加算の算定要件の留意事項・①ロ(PDF1ページ)。
訪問前の指示と訪問後の報告
訪問前に、サ責から担当する訪問介護員等へ、利用者の情報や留意事項を伝えます。文書等の確実な方法で伝達し、サービスの終了後は適宜報告を受けることが必要です。少なくとも次の情報について、前回からの変化も含めて伝えます。
- 利用者のADL(日常生活の動作)や意欲
- 主な訴え、サービス提供時の特段の要望
- 家族を含む環境
- 前回のサービス提供時の状況
- その他、サービス提供に必要な事項
前回のサービス提供時の状況以外は、変更があったときに記載する方法が認められています。文書を直接手渡すほか、FAXやメール等も利用できます。サービス提供後に受けた報告は、サ責が文書または電磁的記録で保存します。
同じヘルパーが同じ日に同じ利用者を複数回訪問し、体調の急変等の特段の事情がない場合などは、指示・報告をまとめることが認められています。サ責が不在の場合も、事前にまとめて指示し、後から報告を受ける方法が可能です。ただし、前回の状況を引き継ぎ、急変時にはサ責へ連絡できる体制が必要です。アプリを使う場合も、訪問前の指示と訪問後の報告を確認できるように運用しましょう。
点検では、利用者1人の訪問1回分を選び、計画、訪問前の指示、提供記録、報告を見比べます。指示した内容がサービスに反映され、その結果がサ責に報告されているかを確認しましょう。計画書の更新については、訪問介護計画書の作成・見直しの進め方で説明しています。
健康診断の実施と緊急時の対応方法
健康診断等は、常時使用する労働者に当たらない訪問介護員等も含め、少なくとも1年以内ごとに1回、事業主の費用負担で実施します。新たに加算を算定する場合は、少なくとも1年以内に実施する計画があれば、この要件を満たすとされています。雇入れ時の健診など、労働安全衛生法上の義務には別途対応が必要です。
他の医師による健診結果を提出する場合や、その際の費用負担については、厚労省Q&Aの条件を確認してください。職員の自己負担としてよいかを、一律に決めることはできません。
緊急時の対応方針、連絡先、対応可能時間等を文書にまとめ、利用者に交付して説明します。重要事項説明書に記載する方法でも対応できます。料金や連絡先を変更したときは、説明書の記載も見直しましょう。訪問介護の重要事項説明書の確認項目も参考にしてください。
緊急時の対応方法の明示は全区分に共通する要件ですが、看護師と24時間連絡できる体制は、看取りによる要件を選ぶ場合に必要です。 どの区分でも一律に24時間の訪問体制が求められるものではありません。
根拠:留意事項・①ニ・ホ(PDF2ページ)、厚労省Q&A集・平成21年3月23日Vol.1問4(PDF3ページ)。
専門家(片山海斗氏)の声
質問: 登録ヘルパーを含む個別研修、会議参加、訪問前後の指示・報告を点検するとき、どの書類をどの順番で照合していますか。
回答:運営指導当日では、勤務形態一覧表から介護職員として常勤換算している職員と資格を確認したのちに、全ての介護職員の個別研修計画書を確認します。個別研修計画が未作成の場合は返還対象になる可能性が非常に高いですので、特定事業所加算を算定している事業所においては、「全ての介護職員」が1年に1回以上個別研修を受講しているかを必ず確認するようにしてください。
区分ごとに異なる人材要件
Ⅰ・Ⅱでは職員の資格割合やサ責の資格・経験を、Ⅲ・Ⅳではサ責の追加配置または勤続年数の割合を確認します。区分ごとの条件を見ていきましょう。
Ⅰ・Ⅱ:資格割合とサ責の資格・経験
| 要件 | 確認する内容 |
|---|---|
| A:訪問介護員等の資格割合 | 介護福祉士が30%以上、または介護福祉士・実務者研修修了者・介護職員基礎研修課程修了者・旧1級課程修了者の合計が50%以上 |
| B:サ責の資格・経験等 | 全てのサ責が「実務経験3年以上の介護福祉士」または「実務経験5年以上の実務者研修修了者・基礎研修課程修了者・旧1級課程修了者」。配置基準上、1人を超えるサ責が必要な事業所は、常勤のサ責を2人以上配置 |
ⅠはAとBの両方、ⅡはAまたはBのいずれかが必要です。Aの50%要件には、初任者研修を修了しただけの職員は含まれません。看護師等の資格を持つ職員は、旧1級課程修了者に含めて計算できます。
Bの実務経験には、在宅・施設を問わず、介護業務に従事した期間を含みます。サ責としての勤務期間に限らず、資格取得前や研修修了前の期間も対象です。資格証とあわせて、実務経験を確認できる資料を用意します。
根拠:告示第95号・第三号イ(5)(6)、ロ、留意事項・②イ、ロ(PDF4〜5ページ)。
Ⅲ・Ⅳ:サ責の追加配置または勤続7年以上の割合
| 要件 | 確認する内容 |
|---|---|
| C:サ責の追加配置 | 配置基準で必要な常勤サ責が2人以下の事業所で、基準上必要な人数を常勤で配置し、さらに常勤サ責を1人以上追加。サ責配置に常勤換算方法を採用する事業所は、この取扱いの対象外 |
| D:勤続年数の割合 | 訪問介護員等の総数のうち、勤続7年以上の者が30%以上 |
Ⅲ・Ⅳは、CまたはDのいずれかが必要です。Ⅲには、後述する重度者等・看取りの要件も加わります。
勤続年数には、現在の事業所での勤務に加え、同一法人等が運営する他の介護サービス事業所、病院、社会福祉施設等で、利用者に直接サービスを提供する職員として働いた年数を含められます。別法人での勤務歴を通算する場合は、「同一法人等」に当たるかなど、通算できる条件の確認が必要です。
非常勤で働いた期間も、勤続年数は常勤換算せずに数えます。一方、勤続7年以上の職員が占める割合は、勤務時間を基に常勤換算した人数で計算します。
根拠:告示第95号・第三号ハ、ニ、留意事項・②ロ、ハ(PDF5ページ)、令和6年度Q&A Vol.1・問6〜8。
資格・勤続年数の割合は常勤換算で計算する
資格割合と勤続年数の割合は、前年度(3月を除く)または届出月の前3か月を対象に、1か月当たりの実績の平均を常勤換算で計算します。資格や勤続年数は、各月の前月末時点で判定します。また、資格割合の計算には、生活援助従事者研修修了者に0.5を乗じる取扱いがあります。
前年度の実績が6か月に満たない事業所は、前年度実績による届出はできません。前3か月の実績で届け出た場合は、届出月以降も毎月、直近3か月の割合を確認し、記録する必要があります。
集計表には、月ごとの勤務時間、常勤の所定労働時間、資格取得・研修修了日、勤続年数の根拠をまとめておくと便利です。
計算例として、対象期間の常勤換算による月平均が「訪問介護員等の全体で5.0人、うち介護福祉士が1.5人」なら、資格割合は1.5÷5.0×100=30%です。ここでの人数は、勤務時間を基にした常勤換算の値です。この例では、生活援助従事者研修修了者に関する補正はないものとしています。
障害福祉の居宅介護等を併せて行う場合も、職員割合は介護保険サービスに従事した時間で計算し、障害福祉サービスの従事時間を含めません。この点は、平成21年4月17日Q&A Vol.2・問12(Q&A集PDF47ページ)でも示されています。
Ⅰ・Ⅲの重度者等・看取りの要件
Ⅰ・Ⅲでは、人材要件に加えて、「重度者等が20%以上」または「看取りの体制と実績」のいずれかを満たす必要があります。Ⅱ・Ⅳには、この要件はありません。
重度者等20%の対象者と計算方法
対象になるのは、次の利用者です。
- 要介護4または要介護5の利用者
- 認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ・Ⅳ・Mに該当する利用者
- たんの吸引等を必要とする利用者。ただし、この区分を算入できるのは、事業所が関係法令に基づく登録を受けている場合
たんの吸引等には、所定の喀痰吸引や経管栄養が含まれます。この区分で数えられるのは、登録を受けた事業所の訪問介護員等がこれらの行為を行うことについて、医師の指示を受けている利用者です。対象となる行為と利用者の条件は、平成24年度Q&A Vol.1・問14(PDF8ページ)で確認できます。
集計期間は、前年度(3月を除く)または届出月の前3か月です。この期間の1か月当たりの実績の平均について、利用実人員または訪問回数で割合を計算します。対象者と利用者全体は、同じ期間・同じ方法で集計してください。複数の条件に当てはまる利用者も、同じ人や訪問を重複して数えることはできません。
例えば、対象期間の月平均の利用実人員が50人、うち対象者が10人なら、10÷50×100=20%です。集計の際は、認定情報、認知症の日常生活自立度、サービス実績を照合し、各利用者がどの条件に該当するかも記録しておきましょう。
根拠:告示第95号・第三号イ(7)(一)、留意事項・③、④(PDF5〜6ページ)、平成24年度Q&A Vol.1・問15(PDF8〜9ページ、重複と割合の計算)。
看取りに必要な体制と実績
看取りによる要件を選ぶ場合は、次の体制と実績の全てが必要です。
- 病院・診療所・訪問看護ステーションの看護師と連携し、24時間連絡でき、必要に応じて訪問介護を行える体制があること。
- 看取り期の対応方針を定め、利用開始時に利用者または家族等へ説明し、同意を得ていること。
- 医師、看護職員、訪問介護員等、ケアマネジャーなどで協議し、実績を踏まえて方針を適宜見直すこと。
- 看取りに関する職員研修を行っていること。
- 前年度または算定月の前3か月に、医師が回復の見込みがないと診断し、方針に基づく説明・同意を経てサービスを受けた利用者が1人以上いること。
実績を確認する期間は、告示と修正後Q&Aでは「前年度または算定日が属する月の前3か月」とされています。2024年3月のQ&Aにあった「前12か月」は、同年5月のVol.6で修正されました。
届出時の集計については、留意事項で「前年度(3月を除く)または届出月の前3か月」と示されています。この期間に対象となる利用者が実人員で1人以上いるかを確認します。Ⅴの要件と違い、月平均で1人という計算ではありません。
記録には、看取り期の状態の変化、本人・家族の意向、説明と同意、職員間の協議、医療職との連携を残します。実績として数えるのは、医師の診断や説明・同意などの要件を満たし、サービスを提供した利用者です。死亡した人数だけで判断するものではありません。
根拠:告示第95号・第三号イ(7)(二)、令和6年度Q&A Vol.6・問1(PDF2ページ)、留意事項・①ヘ、③(PDF2〜3・6ページ)。
専門家(片山海斗氏)の声
質問: Ⅰ・Ⅲの要件を確認するとき、重度者等の割合で判断する場合と、看取りの体制・実績で判断する場合では、最初に集める資料がどう変わりますか。
回答:そもそも看取りでの加算算定は推奨しません。理由として加算算定の条件が変数的であり看取りが必ず3ヶ月で発生するかは断定できないためです。また、障害福祉サービスを除き事業所加算Ⅰの算定も推奨していません。安定的に算定が可能な特定事業所加算Ⅱの算定を強く推奨しています。事業所加算Ⅱ算定後、6ヶ月ほど様子を見て要件1を満たすようであれば1へ区分変更をする選択が低リスクであると考えています。
制度上の補足:看取りの実績は、前年度または算定月の前3か月に、所定の条件でサービスを提供した利用者が1人以上いるかで確認します。3か月ごとの死亡を求める要件ではありません。また、上記の6か月ほど様子を見るという提案は、運用上の考え方です。ⅡからⅠへの変更に、一律の待機期間は定められていません。
特定事業所加算Ⅴの要件|中山間地域等へのサービス提供
Ⅴでは、共通の体制要件に加えて、地域、距離、提供実績、計画の共同見直しの条件を確認します。新規・小規模の事業所も、これらの条件を満たす必要があります。
| 確認項目 | Ⅴの条件・確認方法 |
|---|---|
| 利用者の居住地 | 事業所の通常の事業の実施地域内で、厚労省告示が定める中山間地域等に該当すること |
| 距離 | 利用者の居宅と、最寄りの指定訪問介護事業所との間の実際の移動距離が片道7kmを超えること。自事業所からの距離だけで判断しない |
| 継続的な提供実績 | 前年度(3月を除く)または届出月の前3か月について、対象利用者の利用実人員が1か月当たり平均1人以上 |
| 計画の見直し | 利用者の心身の状況や家族等の環境変化を踏まえ、ヘルパー、サ責、地域の関係者が共同し、訪問介護計画を随時適切に見直すこと |
例えば、直前3か月の対象利用実人員が1人・0人・2人なら、平均は(1+0+2)÷3=1人です。毎月同じ1人に提供していなくても、居住地・距離などの条件を満たす提供実績があれば集計できます。
特別地域加算等を算定する利用者は、実績人数から除きます。一体的に運営する介護予防訪問介護の利用者も、Q&Aで対象外とされています。
計画の見直しは、ヘルパーとサ責に加え、介護支援専門員等の地域の関係者と共同で行います。
根拠:告示第95号・第三号ホ、留意事項・①ト(PDF4ページ)、令和6年度Q&A Vol.1・問3、問5。
Ⅴは、居住地にかかわらず全利用者に算定可能
2024年11月の修正後Q&Aでは、Ⅴの体制要件を満たした事業所は、居住地にかかわらず全ての利用者に算定できるとされています。Ⅴは、事業所の体制を評価する加算だからです。
月途中に中山間地域等から転居した場合も、対象地域に居住していた期間にサービスを提供していれば、その月の利用実人員に含められます。
以前のQ&Aにあった「中山間地域等に居住していた期間だけ加算する」という説明は修正されています。算定時は、前述の地域関係の加算との併算定制限も確認してください。
根拠:令和6年度Q&A Vol.11・問1(PDF2〜3ページ、Vol.1問4を修正)。
自事業所で算定できる区分の選び方
まず共通の体制要件を確認し、次に職員の資格・配置と利用実績を調べます。職員数や訪問件数だけで判断せず、どの要件を満たしているかを次の表に当てはめてみましょう。
| 確認できた条件 | 検討する区分 |
|---|---|
| 資格割合Aまたはサ責要件Bを満たす | Ⅱ |
| AとBの両方に加え、重度者等20%または看取り要件を満たす | Ⅰ |
| 追加配置Cまたは勤続年数Dを満たす | Ⅳ |
| CまたはDに加え、重度者等20%または看取り要件を満たす | Ⅲ |
| 中山間地域等への提供・距離・実績・共同見直しの要件を満たす | Ⅴ。Ⅰ〜Ⅳとの併算定と地域関係加算との制限も確認 |
この表で候補を絞り、具体的な人数・割合・実績期間を確認してから届け出ます。複数の区分に該当する場合は、今後も必要な人員や実績を維持できるかを検討しましょう。
例えば、ⅡからⅠへ変更するには、A・Bの両方に加え、重度者等または看取りの要件を満たす必要があります。加算率と合わせて、追加で必要になる対応も確認します。
特定事業所加算ⅠとⅡの違い
Ⅰは20%、Ⅱは10%です。どちらも共通の体制要件を満たしたうえで、次の違いを確認します。
Ⅰは、資格割合Aとサ責要件Bの両方に加え、重度者等20%または看取りの要件が必要です。ⅡはAまたはBのいずれかが必要で、重度者等・看取りの要件は求められません。職員の人数だけでなく、資格・経験や利用者の状況などで判断することになります。
根拠:告示第95号・第三号イ、ロ、告示第19号・訪問介護費注10。
算定前・算定中の実務チェックシート
必要な書類がそろっているかに加え、研修や会議などを実際に行っているかも確認します。
以下の担当者と点検時期は、制度上の実施頻度を踏まえた編集部の運用例です。実際の届出や自主点検では、自治体が用意する様式・点検表も確認してください。
| チェック | 照合する書類・記録 | 担当と点検時期の例 |
|---|---|---|
| □ 算定区分と請求設定が一致 | 体制届、受理内容、体制等状況一覧表、請求ソフト | 管理者・請求担当/開始・変更時 |
| □ 全員の個別研修計画と実施状況が分かる | 職員一覧、個別計画、受講記録 | 管理者・研修担当/計画時、採用時、月次 |
| □ 対象となる職員全員が会議に参加している | 職員一覧、会議概要、参加者記録 | サ責/会議ごと、月次 |
| □ 訪問前の指示と訪問後の報告が記録されている | 計画、指示、提供記録、報告 | サ責/日々、月次の抽出確認 |
| □ 健診の対象者・受診日・費用負担を確認 | 職員一覧、受診管理簿、健診結果等 | 労務担当/採用時、受診期限前 |
| □ 緊急時の説明と実際の連絡先が一致 | 重要事項説明書、交付・説明記録、連絡表 | 管理者/利用開始時、変更時 |
| □ 資格・実務経験・勤続年数を資料で確認できる | 資格証、研修修了証、経験確認資料、雇用・異動履歴 | 管理者・労務担当/届出前、異動時 |
| □ 資格・勤続年数の割合を正しく計算している | 勤務形態一覧、勤務実績、資格・勤続集計 | 管理者/届出前、前3か月方式では毎月 |
| □ 重度者等の対象者と集計方法が正しい | 認定・自立度等の情報、利用実績、必要な登録の資料 | サ責/届出前、前3か月方式では毎月 |
| □ 看取りの体制と対象期間の実績を確認 | 方針、医療連携体制、診断・同意・研修・提供記録 | 管理者・サ責/選択する場合、状態・体制変更時 |
| □ Ⅴの地域・距離・実績・共同見直しを確認 | 通常地域、対象地域資料、最寄り事業所と経路、利用実績、見直し記録 | 管理者・サ責/選択する場合、転居・計画変更時 |
| □ 利用者説明と請求開始月が一致 | 料金表、説明記録、提供票、請求設定 | サ責・請求担当/開始・区分変更時 |
根拠となる制度上の要件は、告示第95号・第三号と留意事項・①〜④を参照してください。
点検で記録の食い違いや不足が見つかったら、対象者と対象月を特定し、実施した内容を確認します。研修や会議の記録は、実際に行った内容に基づいて残しましょう。
判断に迷う場合は、指定権者にサービス種別、対象年月、加算区分、確認したい要件、手元の資料を伝えて相談し、回答も記録します。書類の準備については、訪問介護の運営指導で確認する書類と準備手順も参考になります。
事業所の書類と照らし合わせて確認したい方へ
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届出から算定開始までの進め方
要件と必要書類を確認し、最新の様式で届け出る
- 算定したい区分と、実際に満たす要件を照合します。
- 資格・勤務・利用実績などの集計期間を決め、根拠資料をそろえます。
- 指定権者の案内から、現行の体制届、体制等状況一覧表、加算に関する届出書、必要な添付資料を確認します。
- 届出の提出・受理と算定開始月を確認します。
- 利用者・ケアマネジャーへの説明、料金表や提供票の確認、請求ソフトの設定を行います。
国の2026年度の体制届様式は、2026年6月以降の算定用として案内されています。届出の際は、指定権者の案内から最新の様式と提出方法を確認しましょう。過去に使った様式が手元にある場合も、変更されていないかを確かめてください。
根拠:令和8年度介護報酬改定ページ・体制届の留意点と別紙様式。
届出日と算定開始月の関係
訪問介護の加算に関する届出は、原則として毎月15日以前なら翌月、16日以降なら翌々月からの算定です。希望する開始月から逆算して、提出時期を確認しましょう。
受付方法、不備があった場合の扱い、締切が休日に当たる場合の対応は、指定権者の案内で確認してください。
根拠:老企第36号・第1の1(6)「届出に係る加算等の算定の開始時期」(令和6年度改正対照表・PDF1〜2ページ)。この原則は、算定単位数が増える届出についての取扱いです。
要件を満たさなくなったときの対応
職員の退職や勤務時間の変更、利用者の状況変化によって、算定要件を満たさなくなることがあります。気づいたら、どの要件をいつから満たしていないのかを確認し、指定権者に届出と請求の対応を相談します。
例えば、前3か月の重度者等の割合が基準を下回った場合は、要件を満たさない月の加算を算定できません。他の区分の要件を満たしている場合も、切り替えには速やかな変更届が必要です。
サ責の要件を月途中で満たさなくなった場合は、Q&Aでは翌月初日から算定できないとされています。ただし、同じ月の末日までに要件を再び満たせば、翌月も算定できる取扱いがあります。人員基準欠如に該当する場合は別です。
これはサ責の要件に関する取扱いです。研修の未実施や職員・利用者の割合不足については、それぞれの要件に沿って確認します。
人員の補充を予定している場合や、書類が一つ不足している場合も、算定を続けられるか、過去分の返還が必要かは状況によって異なります。該当する要件、対象期間、実施した内容と残っている記録を確認して対応しましょう。
加算率が同じでも、適合する要件や集計方法を変えるときは変更届が必要です。例えば、Ⅱの要件を資格割合からサ責要件へ変える場合や、集計を前年度実績から前3か月実績へ変える場合が該当します。
根拠:厚労省Q&A集・平成21年3月23日Vol.1問27・28、同年4月17日Vol.2問13(PDF46〜47ページ)。
特定事業所加算の計算方法と利用者負担
対象サービスの所定単位数から計算する
特定事業所加算は、対象サービスごとの所定単位数に加算率をかけて計算します。月間売上全体へまとめてかける方法では、正しく計算できません。
実際の請求額には、地域区分による1単位の単価、他の加算・減算、端数処理も関係します。
計算例:身体介護20分以上30分未満を月20回、特定事業所加算Ⅱを算定する場合
以下は、1回244単位、1単位10円、自己負担1割で計算した例です。処遇改善加算を含む他の加算・減算は全て除外し、区分支給限度基準額内の利用、公費等の調整なしとしています。
| 項目 | 加算なし | 加算Ⅱあり |
|---|---|---|
| 1回の単位数 | 244単位 | 244×1.10=268.4 → 四捨五入で268単位 |
| 月20回の単位数 | 4,880単位 | 5,360単位 |
| 費用総額(10円/単位) | 48,800円 | 53,600円 |
| 利用者の1割負担 | 4,880円 | 5,360円 |
この例では、費用総額が4,800円、利用者負担が480円増えます。1回ごとに端数処理をするため、月の合計4,880単位へ一括で10%をかけた結果とは異なります。
割合による計算は所定の段階で四捨五入し、金額への換算では1円未満を切り捨てます。実際に請求する際は、適用月のサービスコードと請求ソフトで確認してください。
根拠:令和8年6月・8月版サービスコード表・身体介護1=244単位(PDF4ページ)、身体1・Ⅱ=268単位(PDF43ページ)/厚労省発出・WAM NET掲載、老企第36号・第2の1(1)「算定上における端数処理」(PDF2〜3ページ)。
特定事業所加算は区分支給限度基準額の管理対象なので、限度額を超える部分の負担も確認します。対象サービスには、身体介護や生活援助に加え、通院等乗降介助も含まれます。
詳しくは、令和8年6月・8月版の介護報酬算定構造・訪問介護費(PDF2ページ)/厚労省発出・WAM NET掲載を参照してください。
利用者への説明前に、加算名と区分、適用開始日、自己負担額の変化をケアマネジャーとも確認しておきましょう。自己負担は、負担割合や他サービスの利用状況などによって変わります。加算率と合わせて、負担額がどのくらい変わるかを説明すると伝わりやすくなります。
増える収入と、必要な費用・時間を見積もる
加算で得た収入は、職員の研修や情報共有、人材配置を続けるための費用に充てられます。その一方で、追加配置の人件費、研修・会議への参加時間、健康診断、集計や記録管理にも費用と時間が必要です。
取得前に、加算で増える収入から、新たに必要となる費用を差し引いて試算しましょう。研修や記録管理にかかる時間も見込み、現在の職員体制で日常業務と両立できるかを検討します。
加算取得による利益や職員定着への効果は、事業所の状況によって異なります。収入の増加と、要件を維持するための負担の両方を見て判断しましょう。
なお、返戻と返還は、意味が異なります。 返戻は請求の不備等による差し戻し、返還は既に支払われた報酬を返すことです。要件を満たしていない可能性があれば、対象期間と請求内容を調べ、過誤調整等を含めた対応を指定権者・保険者に確認します。
手続の違いは、神奈川県国保連の「過誤取下げについて」が参考になります。要件を満たさず算定を続けた場合の返還については、堺市の訪問介護の体制届案内「加算の取り下げについて」でも説明されています。提出先や様式は、自事業所の保険者・指定権者の案内を確認してください。
専門家(片山海斗氏)の声
質問: 加算取得を検討する事業所では、収入の見込みに対して、どの人件費・研修費・管理時間を確認すると加算算定の判断がしやすいですか。
回答:そもそも利用者ファイルやBCPなどの書類に不安があるなら算定すべきではありません。特定事業所加算は算定後の加算額が多いので杜撰な書類を作成している場合は多額の返還請求になりかねません。不安な事業所は私が監修している法令遵守アプリ「プロケアDX」や「運営指導対策サービス」を検討してください。
よくある質問
研修は全員同じ内容でもよいですか?
全員に共通するテーマで、同じ研修を受講することもできます。ただし、職員ごとの目標・内容・時期等が分かる計画は必要です。
Q&Aでは、職種、経験、技能などでグループ分けし、同じグループに同じ研修計画を作成することも認めています。事業所の年間予定表を使う場合も、職員ごとの目標や内容が分かる、個別具体的な計画を用意してください。
根拠:厚労省Q&A集・平成21年3月23日Vol.1問3(PDF3ページ)。
紙の記録だと算定できませんか?
紙の記録でも対応できます。文書の手渡し、FAX、メール等による確実な伝達が認められており、報告内容は文書または電磁的記録で保存します。
必要な情報を適切なタイミングで伝え、実施内容と報告を確認できることが大切です。共有や保管に手間がかかる場合は、電子化も選択肢になります。
特定事業所加算の要件確認に使える無料ガイドブック
特定事業所加算を取得するには、研修や会議などの共通要件に加え、算定する区分の人員配置や利用者の要件を確認する必要があります。取得後も、職員の異動や利用者の状況に応じた見直しが欠かせません。
「【訪問介護】特定事業所加算要件確認ガイドブック」には、Ⅰ〜Ⅴの要件早見表、届出の流れ、算定開始後の点検項目を掲載しています。新たな取得を検討している方も、現在の区分を見直したい方も、事業所内での確認にご活用ください。
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