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資格証明書の更新漏れは、突然の就業停止や事業所運営への影響につながる重大なリスクです。では、更新制度の見直しにより何が変わるのでしょうか。
本稿では、制度改正のポイントと事業所が備えるべき対応策をわかりやすく解説します。
この記事でわかること

毎年のように変わる制度の行方に、事業の先行きを案じる方も多いことでしょう。ここでは、国会で審議されている法案の根本的な意図を深く紐解きます。
政府は2026年4月3日、介護保険法を含む社会福祉法等の一部を改正する法律案を閣議決定し、国会へ提出いたしました。この法案に盛り込まれた最大の焦点が、介護支援専門員の資格に関する更新制度の撤廃です。
これまで介護支援専門員は、5年間という有効期間が定められており、期間を満了する前に長時間の研修を受講しなければ、資格そのものが直ちに失効するという極めて厳しい環境に置かれていました。人材不足が深刻化するなかで、この制度が従事者の離職を招く大きな要因となっているという声が全国から上がり続けていたのです。
厚生労働省の調査事業による報告書を見ると、更新のための法定研修に対して「負担だと思う」「やや負担だと思う」と回答した割合が、事前の準備や受講費用の面で実に90パーセントを超えていることが明らかになりました。長時間の講義や演習のために数日間にわたって職場を離れなければならず、その間の業務は他の職員に重くのしかかります。また、数万円から十万円近くに及ぶ受講費用や、遠方の会場へ赴くための交通費や宿泊費を、自己負担としている事業所も少なくありませんでした。
改正法案では、この5年間という有効期間の規定そのものを完全に撤廃する方針が示されました。その結果、一度取得した資格は生涯にわたって有効なものへと変わります。しかし、それは決して専門職としての研鑽を放棄してよいという意味ではありません。例えば、ケアマネとして独立開業した人も、その後も業務で関わりが少ない領域の知識補強や、最新分野あるいは新制度などに対するキャッチアップが良いサービスを提供する上で、資格に関係なくとも実質的には必要となります。
都道府県知事は、その登録を受けている介護支援専門員が研修を正当な理由がなく受けていないと認めるときは、当該介護支援専門員に対し、当該研修を受けるよう命ずることができるものとする。
出典:厚生労働省の改正法案概要(社会福祉法等の一部を改正する法律案)
上記の条文が示す意味は非常に重く、資格の維持と研修の受講を切り離す一方で、学びを怠る者には厳しい態度で臨むという国の方針が明確に表れています。資格を失う不安という外発的な動機による受講ではなく、専門職としての資質向上という自律的な学びを目指すための制度設計へと転換したのです。
専門家の声資格の更新制を廃止することは、介護業界からの人材流出を食い止めるための劇薬です。しかし同時に、専門職としての質の担保という重い責任を、国の画一的な仕組みから個々の事業者への管理へと移譲することを意味している点に注意が必要です。
いつから新しい制度が始まるのかが不透明なままでは、採用や教育の計画も立てづらいとお察しいたします。最も有力な時期と、過渡期における注意点をお伝えします。
現在国会で審議されている改正法案では、介護支援専門員の更新制廃止に関する規定は、法律の公布の日から起算して「1年6ヶ月を超えない範囲内において政令で定める日」から施行されると明記されています。今国会で速やかに成立した場合、準備期間を考慮し、2027年(令和9年)4月からの施行が最も有力な見通しとなっています。
ここで多くの経営者が直面するのが、「施行される前に有効期間が切れてしまう在籍者はどうすればよいのか」という切実な問題です。この点について、行政側の見解は現行の法令に則り極めて厳格な姿勢を崩していません。
山形県が公開している介護支援専門員向けの質疑応答集において、「更新に必要な法定研修を受講できなかった場合、どうなるのか」という問いに対し、介護支援専門員証の有効期間満了日を経過した後は、実務に従事することはできないと明確に回答されています。さらに、いかなる事情があっても有効期間は延長できず、有効期間中に受講するか、期間満了後に改めて再研修を受講するしかないと指導しています。
つまり、新制度が始まるからといって、現在迫っている更新の手続きを見送ることは、経営上極めて危険な判断となります。万が一有効期間を過ぎてしまえば、無資格状態で業務を行ったとみなされ、介護報酬の全額返還という致命的な事態を招きかねません。また、本人が実務に復帰するためには、膨大な時間と費用を要する再研修を最初から受け直す必要が生じます。
過渡期における混乱を防ぐためには、在籍するすべての介護支援専門員の有効期限を改めて一覧化し、新制度が施行される日までに期限を迎える職員に対しては、速やかに現行の更新手続きを進めるよう業務命令として通達することが重要です。この時期の費用負担を事業所が率先して担うことで、職員の不安を払拭し、確かな信頼関係を築くことができます。居宅介護支援事業所の立ち上げと運営において最も重い経費は人件費と採用費用ですが、既存の職員をつなぎ止めるための研修費用は、新たな採用活動に比べてはるかに費用対効果の高い投資と言えます。
資格が永久に続くからといって学びが終わるわけではないという事実に、頭を抱える現場の責任者の方も多いのではないでしょうか。新たな義務の重さを確認いたします。
更新制度が廃止された後も、都道府県知事が行う法定の研修を受講することは、法令上の明確な義務として規定されます。これは、制度改正への対応や新たな介護手法の習得など、専門職としての資質を継続的に向上させる必要があるためです。
| 項目 | 現行の仕組み | 改正法案における新たな仕組み |
| 資格の有効期間 | 5年間で失効 | 生涯有効(無期限) |
| 研修の位置づけ | 資格を更新するための必須要件 | 独立した専門職としての法令上の受講義務 |
| 未受講時の扱い | 資格証明書の即時失効、業務不可 | 知事からの受講命令、最長1年の業務従事禁止 |
| 事業者の責務 | 特段の明文規定なし | 従事状況の報告義務、受講機会の確実な確保義務 |
この表は、介護支援専門員の資格に係る現行の仕組みと改正後の新たな仕組みにおける、有効期間や研修の位置づけの違いを示したものです。
研修を受けなかった場合の不利益な取り扱いも、より直接的なものへと変化します。正当な理由なく受講を拒み、知事からの命令にも従わなかった場合、最長で一年間の業務従事禁止処分が下される可能性があります。
さらに注目すべきは、雇用する事業者に対する責務が法律上で明確化された点です。事業者は、雇用する介護支援専門員の氏名や業務の状況を都道府県知事に報告しなければなりません。また、彼らが法定研修を円滑に受講できるよう、勤務時間の調整や代替要員の確保など、実質的な受講機会を確保する措置を講じる義務が課せられます。これらの義務に違反した事業者に対しては、知事による勧告や命令が行われ、最終的には事業者名が公表される仕組みも創設される予定です。
介護サービスを提供する事業者又は施設の開設者であって、都道府県又は市町村の条例により介護支援専門員を有しなければならないものとされているものは、介護支援専門員を業務に従事させたとき、又は当該介護支援専門員が当該業務に従事しなくなったときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該介護支援専門員の氏名その他厚生労働省令で定める事項を当該介護支援専門員の登録に係る都道府県知事に報告しなければならないものとする。(第六十九条の四十第一項関係)
介護のリスクマネジメントなどの実業務に対して正しい知識が得られるように、職員が研修に参加する時間をどう扱うべきかという労務管理上の悩みについても、行政の見解は明確です。事業所の指示に基づき、業務を遂行する上で必須となる研修に参加させる以上、それは明確な労働時間として算定されなければなりません。
静岡県が公開している主任介護支援専門員研修に関する質疑応答集において、「常勤」の定義について問われた際、当該事業所における勤務時間が、当該事業所において定められている常勤従事者が勤務すべき時間数に達していることと回答されています。
すなわち、法定研修に参加している時間を労働時間から除外したり、無理な有給休暇の消化を強要したりすることは、法令違反となる恐れがあります。研修に参加する日を正式な勤務日として割り当て、その間の給与を適切に保障する仕組みを整えることが大前提となります。利用者の自立支援に向けた支援計画の作成を担う担当者の重責を考えれば、事業所が組織として学習環境を保障することは、サービスの質を維持する上で不可避の投資と言えるでしょう。



これまでは『個人の資格の問題』として片付けられがちでしたが、改正後は『事業者の労務管理の不備』として厳しく問われることになります。学習環境を整備できない事業所は、行政からの指導対象となるだけでなく、社会的な信用を失う危険性を孕んでいます。
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完璧に管理しているつもりでも、思わぬところで指摘を受けることがあります。現場の落とし穴を事前に塞いでおきましょう。
日々の業務に追われる現場では、経営陣が意図しないところで規則の逸脱が起きることがあります。特に、個人の努力に依存した学習体制を敷いている事業所では、悲劇的な事態が頻発しています。
現場であった一コマ
「担当する独居の高齢者が急に体調を崩され、救急搬送に付き添うことになりました。結果として、どうしても外せない法定研修の講義に遅刻してしまい、未受講扱いとなって数年間の努力が無効になりかけました。事業所には代わりの担当者もおらず、誰にも助けを求められませんでした。」(某居宅介護支援事業所勤務・匿名)
このような属人的な運営体制は、行政機関による定期的な監査や確認の場で、最も厳しい指摘を受ける原因となります。
行政から指摘されやすいパターンの代表例
研修を公休日に受講させておきながら、法定の振替休日を与えていない事例が挙げられます。労働基準監督署と合同での監査が行われた場合、過去に遡って未払い賃金の支払いを命じられるだけでなく、悪質な法令違反として指定の取り消しに発展する危険性もあります。
また、「業務の都合でどうしても受講できなかった」という理由で、受講履歴の管理簿に空欄が目立つパターンも、行政の心証を著しく損ないます。改正法案において事業者に「受講機会の確保」が義務付けられている以上、業務の都合を理由に研修を後回しにすることは、事業者の法的責任の放棄とみなされるのです。



多くの居宅介護支援事業所では、ケアマネジャーの更新研修が個人の努力や責任に委ねられてきました。しかし、本来、法定研修の受講機会を確保する責任は事業者側にもあります。
特に近年は、独居高齢者の増加や医療ニーズの高度化により、ケアマネジャーが予定どおりに業務を進めることが難しいケースが増えています。そのような状況下で、長時間に及ぶ更新研修への参加を個人の負担のみで実現させる運用には限界がありました。
更新研修制度の見直しは、決して研修そのものの重要性を否定するものではありません。むしろ、現場の実情に合わせて学習機会を確保しながら、人材確保や離職防止につなげることが目的と考えられます。
今後、事業所には「更新研修があるかないか」ではなく、職員が継続的に学び続けられる環境をどのように整備するかが求められるでしょう。
適切に運営していても、それを第三者に証明できなければ意味がありません。行政側が疑念を差し挟む余地をなくすための具体的な手法をお伝えいたします。
行政機関から求められるのは、意気込みや口頭での釈明ではなく、客観的な記録のみです。指定権者(都道府県や市町村)の確認において、行政に指摘されにくい証拠の残し方を実践することが、事業所を守る強固な盾となります。
行政に指摘されにくい証拠の残し方の一つ目として、研修の記録と出勤簿を完全に一致させ、「業務命令として受講させたこと」を稟議書や業務日報で裏付ける手法が極めて有効です。受講者の氏名が記載された一覧表と、当日の配布資料を必ず一組にして保管します。さらに、通信網を用いた遠隔での研修において通信障害などでやむを得ず欠席した職員に対して、後日どのような補講を行ったのか、その実施記録も併せて残しておくことで、事業所全体としての受講体制が完璧に証明されます。
行政に指摘されにくい証拠の残し方の二つ目として、利用者の支援方針を決定するサービス担当者会議の記録において、特別な対応や例外的な判断を実施した背景を、議事要旨に詳細かつ具体的に書き込むことが挙げられます。これは、研修で学んだ最新の手法を現場でどう活かしているかを示す証拠にもなります。「ご家族の極めて強い希望が継続してあった」「専門的な医療処置が不可欠な状況に陥っていた」といった個別の理由を明確に記載しておくことが、事後の確認において事業所の判断の正当性を証明します。
単なる定型文の羅列ではない、実態を伴った記録を残す習慣を根付かせることで、行政からの不要な減算指導を防ぐことができます。
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慢性的な人手不足に悩む事業所にとって、新たな人材獲得の扉が開かれる期待と、それに伴う組織内の教育体制という課題について整理してまいります。
法改正の全体像のなかで、更新制の廃止と並んで業界に大きな衝撃を与えているのが、介護支援専門員の実務研修受講試験における受験資格の大幅な緩和です。これまで、特定の国家資格に基づく業務に「通算5年間」従事することが求められていましたが、この要件が「3年間」へと短縮される見通しです。
さらに、対象となる国家資格の範囲が広がり、新たに診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師などが追加される方針が示されています。これは、医療や心理の専門知識を持つ多様な人材を介護の現場に呼び込み、支援体制の厚みを増すという国の明確な意図が込められています。



3年という短い期間で受験が可能になることは、事業所にとって採用の裾野が広がるという大きな利点があります。しかし一方で、現場経験の浅い人材が資格を取得して飛び込んでくるため、事業所内で彼らをどう育成し、複雑な関係機関との調整能力をどう身につけさせるかという、新たな教育の壁が立ちはだかることになります。
事務所を新たに開設する際にも、有資格者の確保は常に最大の障壁となってきました。受験資格の緩和によって有資格者の絶対数が増えることは喜ばしいことですが、独立した管理者一人に新人の教育をすべて委ねるのではなく、組織全体で事例を検討し、知見を共有する仕組みづくりがこれまで以上に重要になります。
本稿で詳細に解説してまいりました内容の要点を挙げます。
制度の激しい変化の波に直面し、これからの事業所運営に大きな不安を抱えておられることと深く推察いたします。書類の作成や法定研修の受講状況の管理、そして日々更新される法令への対応に、管理者様や職員の皆様がどれほどの時間と労力を費やしておられるか。そのご負担を少しでも軽くし、本来のやりがいである「利用者への温かな支援」に注力していただきたいと、私たちは心から願っております。
もし、日々の煩雑な業務や情報管理に限界を感じておられるようでしたら、ぜひプロケアDXにご相談ください。皆様の事業所が抱える悩みに寄り添い、確かな安心とゆとりを取り戻すための最適な解決策をともに見つけてまいります。
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