認知症専門ケア加算とは?算定要件や単位数などわかりやすく解説
介護事業所を運営していると、「認知症専門ケア加算って結局どうすれば取れるの?」「加算1と2の違いがいまいち分からない」「運営指導で指摘されやすいって聞くけど大丈夫?」といった疑問を多く耳にします。
認知症高齢者の増加に伴い、この加算は報酬上のメリットだけでなく、事業所の専門性を示す指標としても非常に重要になっています。専門家 片山海斗のアドバイスも含めてご説明しますので、最後までご覧ください。
この記事でわかること
- 認知症専門ケア加算の基本的な仕組みと算定要件(加算1・2の違い)
- 「何日以内」「誰が」「どんな体制で」算定できるのかという実務上のポイント
- 運営指導(実地指導)で実際に確認される注意点と、失敗しない運用方法
認知症専門ケア加算とは?

認知症専門ケア加算の概要
認知症専門ケア加算とは、認知症のある利用者に対して、専門的な知識と体制に基づいたケアを提供している介護事業所を評価する加算です。
単に人手を確保しているかではなく、認知症ケアの質を組織として維持・向上できているかが評価される点が大きな特徴です。
認知症高齢者の増加を背景に、厚生労働省は「誰でも同じケア」ではなく、専門性のある認知症ケアを提供できる体制づくりを重視しています。その考え方を介護報酬で評価する仕組みが、認知症専門ケア加算です。
この加算では、
- 認知症ケアに関する研修を修了した職員が在籍していること
- その職員が実際に現場で認知症ケアに関与していること
- 事業所全体で認知症ケアを支える体制が整っていること
といった「運用の実態」が問われます。
資格や研修修了者がいるだけでは算定できない点は、特に注意が必要です。
また、認知症専門ケア加算には 加算1・加算2の2区分があり、加算2は加算1よりも専門性・組織的な関与の度合いが強く求められます。その分、要件を正しく理解せずに算定すると、運営指導(実地指導)で指摘を受けやすい加算でもあります。
まずは、自事業所がどの介護サービスで算定できるのかを把握することが、正しい運用への第一歩です。
参考:認知症参考資料(厚生労働省)

認知症専門ケア加算のメリット・デメリット
認知症専門ケア加算は、認知症ケアの専門性を高めた体制を評価する加算ですが、事業所運営の視点で見ると、メリットだけでなく体制整備や人材確保などの課題もあります。
ここでは、介護事業者の視点から認知症専門ケア加算のメリットとデメリットを整理します。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 認知症ケアの専門性を評価する報酬を得られる 職員の認知症ケアスキル向上につながる 認知症利用者への対応力が高まりサービスの質が向上する 家族や地域からの信頼につながる | 研修受講など人材要件を満たす必要がある 職員配置や体制整備の負担がある 加算算定のための記録・管理が必要になる 小規模事業所では人材確保が難しい場合がある |
認知症専門ケア加算のメリット
認知症専門ケア加算には、上記の比較表で挙げたようなメリットがあります。特に認知症ケアの専門性が評価され、報酬として加算される点は事業所にとって大きなメリットです。認知症の利用者は年々増加しており、専門的なケアの重要性が高まる中で、その取り組みが制度として評価される仕組みとなっています。
また、加算算定のためには認知症ケアに関する研修を受けた職員の配置などが求められるため、結果として職員全体の認知症ケアの理解やスキル向上につながることも期待できます。研修やケアの見直しを通じて、利用者一人ひとりの症状や行動心理症状(BPSD)に応じた対応力が高まり、施設全体のケアの質向上につながるケースも少なくありません。
さらに、認知症ケアに積極的に取り組んでいる事業所として評価されることで、家族や地域からの信頼につながる点も見逃せません。認知症利用者への対応力は事業所選びの重要なポイントになるため、専門的な体制を整えていることは施設の強みになることがあります。
認知症専門ケア加算のデメリット
一方で、事業者にとってはメリットだけでなくデメリットもあります。
まず挙げられるのが、人材要件を満たすための体制整備が必要になる点です。認知症専門ケア加算では、認知症介護に関する研修を修了した職員の配置などが求められるため、事業所によっては研修受講や人材育成の計画を進める必要があります。
また、職員配置や体制管理の負担が生じる点も運営上の課題となることがあります。特に小規模事業所では、限られた職員数の中で要件を満たす人材を確保することが難しい場合もあります。
さらに、加算を継続して算定するためには、認知症ケアの実施状況や体制を適切に管理していく必要があります。記録や体制管理などの事務的な対応も求められるため、制度の趣旨を理解したうえで無理のない運用体制を整えることが重要です。
このように、認知症専門ケア加算は認知症ケアの質向上を評価する制度である一方、事業所としては人材育成や体制整備を計画的に進めることが求められます。適切に活用することで、利用者へのケアの質向上と事業所運営の両立につなげることが可能になります。
認知症専門ケア加算を算定できる介護サービス一覧
認知症専門ケア加算は、すべての介護サービスで算定できるわけではありません。
対象サービスが明確に限定されているため、まず自事業所が該当するかを確認することが重要です。
算定可能な主な介護サービスは以下のとおりです。
| 訪問介護 |
| 訪問入浴介護 |
| 認知症対応型共同生活介護 |
| 短期入所生活介護(ショートステイ) |
| 短期入所療養介護 |
| 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) |
| 介護老人保健施設 |
| 介護療養型医療施設 |
| 介護医療院 |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
| 夜間対応型訪問介護 |
| 地域密着型特定施設入居者生活介護 |
| 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
| 特定施設入居者生活介護 |
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認知症ケア加算1と2の違いとは?要件・体制の違いをわかりやすく解説

認知症専門ケア加算には「加算1」と「加算2」の2つの区分があります。
どちらも認知症ケアの専門性を評価する加算ですが、求められる体制や専門性のレベルに違いがあります。
簡単に言うと、
- 認知症専門ケア加算1:基本的な認知症ケア体制を評価する加算
- 認知症専門ケア加算2:より高度な専門体制や指導体制を評価する加算
という位置づけです。
認知症専門ケア加算2では、認知症介護指導者研修修了者などによる職員への助言・指導体制が求められる点が大きな違いです。
そのため、加算2は加算1よりも高い専門性と組織的なケア体制が必要になります。
| 項目 | 認知症専門ケア加算1 | 認知症専門ケア加算2 |
|---|---|---|
| 専門性 | 基本的な認知症ケア体制 | より高度な専門体制 |
| 研修要件 | 認知症介護に関する研修修了者 | 認知症介護指導者研修修了者など |
| 体制 | 認知症ケアに対応できる体制 | 職員への指導・助言体制が必要 |
| 役割 | 現場でのケア中心 | 組織的な教育・助言も実施 |
このように、認知症専門ケア加算2は職員への指導や助言など、事業所全体の認知症ケアの質向上を担う体制が求められる点が大きな違いです。
加算1の概要
比較的取り組みやすい基本型の加算です。主なポイントは以下です。
- 認知症介護に関する研修を修了した職員が在籍
- 認知症高齢者の日常生活自立度が一定以上の利用者が対象
- 事業所として認知症ケアの体制が整っていること
加算2の概要
加算2は、より専門性の高い体制を評価する上位加算です。
- 認知症介護指導者研修修了者など、より高度な専門職が関与
- 多職種連携(看護・介護・リハビリ等)が明確
- ケアの質を継続的に見直す仕組みがあること


認知症専門ケア加算の単位数と報酬の考え方
認知症専門ケア加算の単位数や報酬は、提供している介護サービスの種類によって異なります。主なサービス別の内容は、以下のとおりです。
認知症ケア加算1と2の単位数・報酬違い
認知症専門ケア加算は「1日あたり」で算定される加算です。
まずは単位1と単位2の違いを、数字で直感的に理解することが重要です。
単位数は介護報酬改定時やサービス種別により細部が異なる場合があります。
以下は多くの在宅・施設系サービスで共通して用いられている代表的な単位数です。実際の算定時は必ず最新の告示・自治体通知を確認してください。
| 区分 | 単位数(1日あたり) | 月額報酬の目安(30日) | 特徴・位置づけ |
|---|---|---|---|
| 認知症専門ケア加算【単位1】 | 3単位/日 | 約900円/月 | 基本的な専門体制を評価する加算。研修修了者の配置が中心 |
| 認知症専門ケア加算【単位2】 | 4単位/日 | 約1,200円/月 | 指導者研修修了者等が関与。より高度で組織的な認知症ケアを評価 |
※1単位=約10円(地域区分により増減あり)
単位数より重要なポイント
実務・運営指導の現場では、単位数そのものよりも
- なぜ単位1なのか/単位2なのかを説明できるか
- 書類・記録・体制がその区分に合致しているか
が厳しく見られます。
ここが曖昧なまま算定していると、区分変更漏れや過去返還につながるリスクがあります。
認知症専門ケア加算は1日あたりの加算として算定されます。単位数はサービス種別・加算区分によって異なりますが、積み上げると月数万円〜数十万円規模になるケースも珍しくありません。
ここで重要なのは、
- 「取れるのに取っていない」
- 「取っているが要件を満たしていない」
どちらも経営上の大きな損失・リスクになるという点です。
認知症専門ケア加算の算定要件とは?

認知症専門ケア加算の算定要件は、一見すると複雑ですが、実務上は「誰に」「誰が」「どんな体制で」「いつから算定するか」という4つの視点で整理すると、非常に理解しやすくなります。
ここでは、運営指導(実地指導)で実際に確認されるポイントも含めながら、要件ごとに解説します。
要件① 対象となる利用者の要件(誰に算定できるか)
この加算は、すべての利用者に自動的に算定できるものではありません。
以下のいずれかに該当する利用者が対象となります。
- 医師により「認知症」と診断されている利用者
- 診断名がなくても、「日常生活自立度(認知症高齢者の日常生活自立度)」で一定以上と判断される利用者
※「日常生活自立度」とは、認知症の症状が日常生活にどの程度影響しているかを示す指標です。
要件② 人材・研修の要件(誰がケアに関わるか)
次に重要なのが、認知症ケアに関わる職員の専門性です。
- 加算1: 認知症介護に関する所定の研修を修了した職員が、実際にケアに関与していること
- 加算2: 認知症介護指導者研修修了者などが、現場職員への指導・助言を行っていること
ここで注意すべき点は、「研修修了者が在籍している」だけでは要件を満たさないということです。
要件③ 事業所としての体制要件(どういう体制で行っているか)
認知症専門ケア加算は、個人ではなく事業所全体の取り組みを評価する加算です。
そのため、以下のような体制整備が求められます。
- 認知症ケアに関する定期的な研修や情報共有の実施
- 多職種(介護職・看護職など)での連携体制
- ケア内容や助言内容が記録として残っていること
要件④ 算定開始のタイミング(いつから算定できるか)
最後に、非常にトラブルが多いのが算定開始日です。
認知症専門ケア加算は、
- 利用者要件
- 人材要件
- 体制要件
すべてがそろった日以降でなければ算定できません。よくある誤解として、「研修を修了した月から」「体制を整えたつもりの月から」といった曖昧な判断で算定を始めてしまうケースがあります。
参考:令和6年度診療報酬の改定の概要【重点分野II(認知症、精神医療、難病患者に対する医療)】(厚生労働省)

研修・委員会・書類の準備を、もっと進めやすく


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「何日以内」が重要?認知症専門ケア加算 算定タイミングの実務
検索でも非常に多いのが「何日以内に算定できるのか」という疑問です。
原則として、
- 認知症の状態が確認できた日
- ケア体制が整った日
いずれか遅い日以降から算定開始となります。
初回アセスメント(利用者の心身状態を評価すること)や、医師の意見書、主治医意見書の内容との整合性が重要です。
専門家の声実地指導でよく見るのが「実際は後から体制を整えたのに、利用開始日から算定していた」というケースです。
悪気はなくても、結果的に返還対象になることがありますので注意しましょう。


認知症専門ケア加算のよくある失敗例と改善策
認知症専門ケア加算は、制度理解が浅いまま算定すると、運営指導で否認・返還につながりやすい加算です。
これまで多くの事業所を支援してきた中で、実際に多かった失敗例と、その改善策を説明します。
失敗例① 研修修了者はいるが「実際の関与」が確認できない
よくある状況
- 認知症介護研修や指導者研修の修了者は在籍している
- しかし、日々のケア記録や会議資料に、その職員の関与が残っていない
この場合、運営指導では 「形式的な配置」「名ばかり要件」と判断され、加算否認となる可能性があります。
改善策
- 認知症ケアに関する助言・関与内容を記録に残す
- ケース検討会やミーティング議事録に専門職の発言を明記する
失敗例② 認知症ケア加算1と2の違いを理解せず算定している
よくある状況
- 指導者研修修了者が在籍しているため、当然のように加算2を算定
- 実際には、指導・助言体制が整っていない
このケースでは、「加算2は否認」「加算1との差額分を返還」となることがあります。
改善策
- 判断フローチャートを用いて算定区分を定期的に見直す
- 加算2に必要な役割・記録が揃ってから区分変更する
失敗例③ 算定開始日の考え方を誤っている
よくある状況
- 利用開始日から当然のように算定している
- 実際には体制整備が後追いになっている
算定開始日は、 「利用者要件」と「体制要件」がそろった、いずれか遅い日 である必要があります。
改善策
- 体制整備日を明確に記録しておく
- 算定開始チェックリストを作成する
失敗例④ 現場任せで管理者が要件を把握していない
よくある状況
- 現場職員に加算対応を丸投げしている
- 管理者・経営者が要件を説明できない
運営指導では、管理者へのヒアリングで 「誰が・どの要件を・どう管理しているか」 を確認されます。
改善策
- 管理者が要件を一覧で把握できる資料を作成
- 加算を“現場業務”ではなく“経営管理”として位置づける



上記の失敗例に共通するのは、「個人の資格や配置だけで安心してしまう」という点です。重要なのは、管理者が加算要件を把握し、体制や関与が組織として見える状態にあるかです。
運営指導では、これができているかどうかが判断の中心になります。
記録や会議資料、指導体制の整備など、事前に確認・整備しておくことが失敗を防ぐ鍵です。
よくある質問
認知症の診断がなくても算定できますか?
医師の診断名がなくても、日常生活自立度など客観的指標で該当すれば算定可能とされています。
途中で認知症専門ケア加算の要件を満たさなくなった場合は?
その時点以降は算定不可となり、遡及算定は認められません。
認知症専門ケア加算の算定要件を満たすには、何から始めるべきですか?
いきなり研修確保から始めるのはおすすめできません。
まずは、
- 自事業所の認知症利用者割合を把握
- 現在のケア課題を整理
- 職員のスキルレベルを確認
という現状分析が重要です。
その上で、
- どの加算区分を目指すか
- 加算1と2のどちらが現実的か
を判断する方が、無理のない体制整備につながります。
認知症ケア加算と認知症専門ケア加算は同じ加算ですか?
いいえ、別の加算です。名称が似ているため同じ制度と思われがちですが、評価のレベルと求められる専門性が異なります。大きな違いは「専門性の深さ」です。
■ 認知症ケア加算とは
- 認知症に対応できる体制を整えていることを評価
- 研修修了者の配置や基本的な体制整備が中心
- “組織として対応できる状態”を評価する加算
■ 認知症専門ケア加算とは
- より高度な専門研修修了者の配置
- 事業所内での指導・助言体制
- ケア内容への専門的関与の継続
つまり、
- 認知症ケア加算=「対応体制の整備」
- 認知症専門ケア加算=「専門性を主導できる体制」
という違いがあります。
2026年の診療報酬改定で認知症専門ケア加算の評価は変わりますか?
2026年度の診療報酬改定では、医療全体の評価軸として 在宅・地域連携の強化 や 認知症対応力の評価見直し が打ち出されています。
病院・在宅医療の評価体系再編などが進む中、認知症専門ケア加算の評価ポイントも“医療・介護連携”の文脈で注目されやすくなる方向性があると考えられます(診療報酬改定の全体像・傾向より)。
まとめ
認知症専門ケア加算は、運営指導(実地指導)で重点的に確認される加算です。単に書類が揃っているかではなく、制度を理解したうえで実際に運用できているかが見られます。
対象となる利用者、人材の役割、組織体制、算定開始時期という4つの要件を、事業所として整理・管理できているかが重要です。
特に、加算1と加算2の違いは「資格の有無」ではなく、「現場や組織への関与の深さ」にあります。
この点を曖昧にしたまま算定すると、運営指導で否認や返還につながるリスクがあります。
認知症専門ケア加算は、現場任せにするのではなく、経営管理の一部として捉えることが、安定した算定と運営指導対策の近道です。少しでも不安がある場合は、早めに体制や算定区分を見直すことをおすすめします。
「今の算定区分は本当に適切なのか」「運営指導で説明できる体制になっているか」
こうした不安を感じたまま運営を続けることは、経営上の大きなリスクになります。
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