【人手不足対策】介護施設の業務効率を上げる「5S活動」とは?具体例・目標・進め方を解説
「人が足りないのに、業務は増える一方…」
そんなデイサービス・介護施設の悩みを解決する鍵が「5S活動」です。
ムダな動き・探し物・事故リスクを減らし、少ない人員でも現場が回る仕組みをつくることができます。
本記事では、介護現場で使える5S活動の基本から、メリット・デメリット、具体的な目標例までをわかりやすく解説します。
業務効率を上げる必要性
介護の人材不足は深刻な問題です。
令和2年度介護労働安定センターの調査では、介護サービスを提供する従業員の
60%以上の職場が不足感を感じているとの結果がでています。

国も、さまざなま対策を打ち出していますが、需要と共有が追いついておらず、
苦しい状況が変わらないのが現状です。
これからの介護現場は少ない人員でサービスの質を担保していかければならない現状があります。
そのため、3Mと言われている、「ムリ・ムダ・ムラ」を徹底的に省く必要があります。
3M「ムリ・ムダ・ムラ」とは?
3M「ムリ・ムダ・ムラ」とは、業務効率を上げる際に注目されることが多く、
TPC(トヨタ生産システム)では、この「ムリ・ムダ・ムラ」を徹底的になくして
合理化を進めたことが有名です。
ムリとは?
「能力以上の負荷がかかっている状態」のことです。
・作業や業務内容に対して、人手が少なすぎる
・負荷のかかる作業や姿勢が長時間続く など…
このような状態が続くと、事故の増加などに繋がります。
ムダとは?
「能力が負荷を上回っている状態」のことです。
・指示待ち状態
・1つの作業に何度も行き来する
・状況共有がされておらず、常に確認作業がいる
結果、時間に追われることに繋がります。
ムラとは?
「ムリとムダが混在し、作業にばらつきがある状態」のことです。
作業が標準化されておらず、人によって時間に大きな差が生まれてしまいます。
結果、できる人に仕事がかたより負荷がかかるということに繋がります。
5S活動とは?介護現場での意味と基本

「5S活動」の目的
5S活動には、3つの目的があります。
①安全な職場づくり ②効率的な職場づくり ③快適な職場づくり 以上3つです。
①安全な職場づくり
5S活動に取り組むことで、介護施設でよく起こる転倒、転落、食中毒などの感染症を減らし、
ヒヤリハットや事故の減少に繋がります。
②効率的な職場づくり
職場から不要なものなくしたり、一瞬で認識できる状態を作ったりすることで、
素早くスムーズに作業ができる状態を作っていくことができます。
これは、ものだけでなく、書類やパソコン内のデータにも言えることです。
③快適な職場づくり
5Sに取り組むことで、衛生面、職員の身体・精神面での負担軽減、職場内コミュニケーション、
報連相、チームの連携など、さまざまな効果が期待できます。
目的の明確化と周知の重要性
5S活動に取り組むにあたり、
目的を明確にし、しっかりとスタッフ全員に周知した上で始めることが重要です。
これが曖昧なままスタートすると、
・上から言われたからただやっている
・なんとなく継続している
・表面上の活動となり、ただ、きれいにすることが目的となってしまう
・職員の意識改革や業務を快適にすることまで繋がらない…
などといった、状態に陥ってしまいます。
5S活動のメリット・デメリット
5S活動には、現場改善や業務効率化といった多くの効果が期待できますが、実際に導入・運用するうえでは注意すべき点もあります。ここでは、デイサービスなどの介護事業者の視点から、メリットとデメリットを整理します。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 業務効率の向上(無駄な動き・探し物の削減) 事故・ヒヤリハットの防止 職員教育・新人育成がしやすくなる 利用者・家族からの信頼向上 施設全体の品質(サービスレベル)の底上げ | 定着までに時間がかかる 職員の負担・抵抗感が生まれやすい 形だけの運用(形骸化)になりやすい |
5S活動のメリット
5S活動には、上記の比較表で挙げたようなメリットがあります。特に業務効率の向上に関しては、物品の配置や動線が整理されることで「探す時間」や「無駄な移動」が減り、職員の負担軽減につながります。
また、事故防止の観点でも大きな効果が期待できます。床の整理整頓や不要物の排除により、転倒リスクやヒヤリハットを未然に防ぐ環境づくりが可能になります。
さらに、5Sが徹底された職場はルールや基準が明確になるため、新人職員の教育がスムーズになります。結果として、サービスの質が均一化され、利用者や家族からの信頼向上にもつながります。
5S活動のデメリット
一方で、事業者にとっては、メリットだけでなくデメリットもあります。特に導入初期においては、職員への周知やルール作りに時間と労力がかかる点が挙げられます。
また、現場によっては「また新しい取り組みか」といった抵抗感が生まれることもあり、形だけの運用に陥るリスクもあります。こうした状態では、本来の改善効果が得られないため、継続的な見直しや現場への落とし込みが重要になります。
5S活動の目的とは?介護施設で求められる理由
5S活動を効果的に進めるためには、「何となくきれいにする」といった曖昧な取り組みではなく、具体的な目標を設定することが重要です。特にデイサービスなどの介護現場では、業務効率や安全性に直結するため、数値や行動レベルで明確にすることが求められます。
ここでは、介護施設で実際に活用しやすい目標例を紹介します。
業務効率に関する目標例
業務効率の改善を目的とした5S活動では、「探す・戻す・移動する」といった無駄な動きを削減することがポイントです。
例えば、「物品を探す時間を1日合計10分以内にする」や「使用後5分以内に元の位置へ戻す」といった具体的な行動基準を設けることで、職員全体の意識統一につながります。こうした小さな改善の積み重ねが、結果的に残業削減や業務の平準化に寄与します。
安全対策に関する目標例
介護現場では、転倒やヒヤリハットの防止が重要なテーマです。5S活動においても、安全に直結する目標設定が効果的です。
例えば、「床に物を置かない状態を常に維持する」「通路幅を一定以上確保する」「転倒リスクのある箇所を週1回点検する」など、具体的なルールを設けることで、事故の未然防止につながります。
清掃・衛生に関する目標例
清潔・清掃に関する目標は、利用者満足度や感染症対策にも関わる重要な要素です。
「毎日決まった時間に清掃を実施する」「チェックシートの実施率100%を維持する」など、誰が見ても達成状況が分かる形にすることで、形骸化を防ぐことができます。また、役割分担を明確にすることで、責任の所在もはっきりします。
職員教育・定着に関する目標例
5S活動を継続させるためには、職員への教育や習慣化も欠かせません。
「新入職員へ入職1週間以内に5Sルールを共有する」「月1回の振り返りを実施する」など、仕組みとして組み込むことが重要です。これにより、属人化を防ぎ、施設全体としての取り組みとして定着しやすくなります。
5S活動は“継続すること”が最も重要であり、そのためにも達成可能で具体的な目標設定が欠かせません。
5S活動(5エス)の内容と進め方
5S活動(5エス)は、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」の5つで構成されています。

①整理
整理とは、職場内にあるものを、「要るもの」「要らないもの」「すぐに要らないもの」に分けて、
要らなものを徹底的に処分することです。
整理と聞くと、「物を整えて、きっちり収める」と捉えられることが多いが、
ここでは、「要らないものをしっかり処分すること」です。
物は、処分しないと、どんどん溜まっていきます。
物が溜まっていくと、職場有効スペースはどんどん狭くなります。
職場を快適にするには、まずは「整理」が重要です。整頓は整理が完全に済んでから行います。
「要るもの」…日々使われているもの
「要らないもの」…使用しないもの、壊れているもの
「すぐに要らないもの」 …半年、1年に1回程度など、使用頻度は低いが必ず使うもの
上記、3つにしっかりと区分けし、要らないものを徹底的に処分していきます。
介護施設では、以前からずっと置かれているものを、
自分達の判断で処分できず、とりあえず置いておこうとなっているものは結構多いです。
組織全体でそれぞれの基準を決めて、例外を職場を必要なものだけの状態にすることが大切です。
そして、ルールに則り、例外を作らずに処分していくことがポイントです。
②整頓
必要なものを、いつでも誰でもすぐに取り出せるようにすることです。
介護施設では、同じ道具を複数の人で共有することが多くなります。
その度に戻す場所が変わっていたら、その都度探し回らなければなりません。
このような光景は、介護現場で本当によく目にします。
整頓とは、常に全てのものを誰でも迷いなくすぐに使えるようにしていく活動です。
大きな施設ほど、異動や離職などで、職員の入れ替わりも多くなりますので、とても重要になります。
整頓で大切な考え方は、「きれいかどうか」ではなく、「効率的どうか」です。
③清潔
誰が掃除をしても同じきれいな状態を維持することです。
きれいさの基準は人それぞれです。
しっかりときれいの基準を明確にする必要があります。
例えば、仕事から帰る時は、机の上をきれいにして帰るというルールを作ったとします。
しかしこれでは、かなり基準は曖昧です。
仮に、「机の上は物がない状態」にして帰りましょうとするとどうでしょうか?
これなら、基準のズレはほぼないと思います。
介護現場では、食中毒や感染症予防のためにも、清掃はとても大切です。
いつ、だれが、どのように掃除をするのかを具体的に決めていきます。
しかし、人は慣れてくると、うっかり忘れてしまったり、手順を省いてしまったりしてしまいます。
そのためにも、「忘れない仕組み」、「ルールを守れる仕組み」を作ることが大切です。
また、清掃には点検の効果もあります。
決められた頻度でしっかり清掃を行っていると、変化や異常に気づきやすくなります。
そのような積み重ねがミスや事故を防ぐことにも繋がります。
④清潔
3S(整理・整頓・清潔)が標準化(ルール化)され、それが維持されている状態です。
ルールを決めても忘れたり、守れなかったする状況は必ず出てきます。
そのような時は、ルールを守らなかった人ではなく、ルールの方に問題があると考えようにしましょう。
そして、どうすればみんなが守れるか、スタッフみんなで話し合うことが大切です。
そのような話し合いの場の積み重ねが、意思統一にも繋がります。
⑤躾(しつけ)
躾(しつけ)という言葉だけ聞くと、子供やペットをしつけるように、
上から下のものに対して言うことを聞かせるというイメージを持ってしまいますが、そうではありません。
ここでの躾の意味は、清潔な状態が習慣化して、当たり前になっている状態です。
当たり前というのは、無意識でできる状態のことです。
この状態になれば、当たり前のことを当たり前にできる風土が出来上がります。
そうすれば、組織全体の感性は高まり、
職員1人1人が職場の些細な変化や、異常に気づきやすくなります。
色々なことを早期に発見できることで、ミスや事故の減少にも繋がります。
このような動きが取れるようになると、
結果として、コミュニケーションの活性化、チームワークの向上、当事者意識の向上に繋がります。
5S活動は、物の整理整頓から始まりますが、最終的には感性の高い組織を作っていく活動になります。
5S活動の具体例|介護施設での改善事例
5S活動は、単なる整理整頓ではなく、現場の業務効率や安全性を大きく改善する取り組みです。ここでは、介護施設における代表的な改善事例を紹介します。
物品管理の見直しによる業務効率の改善
ある介護施設では、備品の保管場所が統一されておらず、職員が都度探し回る状況が発生していました。そこで、5S活動の「整理」「整頓」を徹底し、使用頻度ごとに配置を見直し、ラベル表示を行いました。
その結果、探し物の時間が大幅に削減され、業務の流れがスムーズになりました。特に忙しい時間帯のストレス軽減にもつながり、職員満足度の向上にも寄与しています。
動線の整理による事故リスクの低減
通路に物品が置かれている状態が常態化していた施設では、転倒リスクが課題となっていました。5S活動の「清掃」「清潔」を軸に、通路の確保と不要物の排除を徹底しました。
その結果、ヒヤリハットの件数が減少し、安全な環境づくりにつながりました。利用者だけでなく、職員にとっても安心して働ける環境が整備されました。
5S活動チェックシートの活用方法(介護施設向け)
5S活動を継続・定着させるためには、チェックシートの活用が効果的です。ルールを決めるだけではなく、「実施されているか」を可視化することが重要です。
例えば、「物品が定位置に戻されているか」「床に不要物が置かれていないか」「清掃が実施されているか」といった項目を定期的に確認することで、5Sの状態を維持しやすくなります。
また、チェックシートを活用することで、職員ごとの認識のズレを防ぎ、組織として統一した基準で運用できるようになります。形式的なチェックにならないよう、定期的な見直しやフィードバックを行うことも重要です。
5S活動を成功させるポイントとマニュアル化のコツ
5S活動は、一度取り組んで終わりではなく、継続してこそ効果を発揮します。そのためには、現場に定着させるための工夫が欠かせません。
まず重要なのは、「誰が見ても分かるルール」にすることです。例えば、物品の配置や清掃の方法を明文化し、写真や図を用いて共有することで、新人職員でも迷わず実践できる環境を整えることができます。
また、5S活動をマニュアルとして整備することで、属人化を防ぎ、施設全体で統一した取り組みが可能になります。さらに、定期的な振り返りや改善を行うことで、形骸化を防ぎ、継続的な業務改善につなげることができます。
まとめ
5S活動は、もともと製造業の現場で生まれた改善手法ですが、近年では医療・介護施設においても、業務効率化や安全対策の手段として広く活用されています。
特に介護施設では、慢性的な人手不足が続く中で、限られた人員でも質の高いサービスを維持していくための仕組みづくりが重要になっています。その中で、「ムリ・ムダ・ムラ」を見直し、業務の流れを整える5S活動は、有効な取り組みの一つと言えるでしょう。
5S活動を進めることで、探し物や無駄な動きが減り、職員が利用者と向き合う時間を確保しやすくなります。また、整理整頓された環境は事故防止にもつながり、職員にとっても働きやすい職場づくりに寄与します。
一方で、5S活動は短期間で成果が出るものではなく、組織全体で継続的に取り組んでいく必要があります。人手不足の中で新たな活動を始めることは負担に感じられることもありますが、小さな改善を積み重ねることで、長期的には大きな効果が期待できます。
必要に応じて外部の専門家やコンサルタントの支援を受けながら、自施設の状況に合わせた形で無理なく進めていくことが、5S活動を定着させるポイントです。
5S活動とあわせて、書類作成や法定研修の準備にかかる負担を見直したい方は、プロケアDXの業務支援内容をご覧ください。




