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介護施設において、人手不足は大きな問題となっています。
2025年には、介護人材は、32万人が不足すると言われており、更なる深刻化が見込まれます。
そのような状態であっても、利用者へのケアの質の維持・向上は求められています。
しかし、今までと同じサービスを、人手が少ない状態で行うのであれば、確実にサービスの質は低下します。
求められているのが、「介護業務の効率化」です。
今までの業務を見直し、少ない人数でも、質を落とさずサービスを提供していくためには、「介護業務のICT・IOT化」は必須となります。
本記事では、「介護業務のICT・IOT化」について、導入のメリット・デメリットから、活用できる補助金まで、
徹底解説致します。
これから、ICT・IOTの導入を検討されている介護施設の経営者・管理者の方は必見の内容となっています。
ぜひ、最後までご覧下さい。
ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを意味します。ICTを活用したシステムやサービスが普及することで、社会インフラとして新たなイノベーションを生むことが期待されています。
「IOT(アイオーティー)」とは”Internet of Things”の略であり、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。具体的には、インターネットを介して通信するモノ、またその技術を意味する言葉です。モノから得た情報を取得し分析した後、新たな反応を返すという役割を担っています。
手作業やアナログでの業務が多い介護業界では、「業務のICT・IOT化」がこれからの経営を大きく左右するといっても過言ではありません。
冒頭にものべましたが、これから介護業界の人手不足は更に深刻化します。
団塊の世代(第1次ベビーブームに生まれた人:680万人)が75歳以上を超えるとされる2025年問題。
厚生労働省が2021年7月9日に公表した介護職員の必要数では、介護職員数211万人を基準として、2023年度には22万人の不足、2025年には32万人の介護職員が不足すると予測されています。
このデータから解ることは「どれだけ介護事業所が人材確保の対策しても業界全体の人手不足は変わりない」ということです。
これからは、いかに少ない人数で、業務を効率的に行っていけるかが重要になります。
業務が効率化できていないと、介護職員の業務負担はどんどん増加し、心身の不調や離職に繋がることも多くなります。結果、経営困難に陥ることも考えらます。
業務効率を上げることは、職員の業務負担軽減にも大きな効果を発揮します。
そこで注目されているのが、「介護業務のICT・IOT化」です。
平成24年の総務省のデータで少し古いもになりますが、
医療・介護・保育業界は、他の業界と比べて、ICT活用率・効果ともに最低水準となっています。
現在も多くの介護施設で、手書きの記録や申し送り、非効率的な情報共有や会議など、アナログな方法で業務が行われています。業界全体として、職員が高齢化しておいることもあり、保守的で新しいものを取り入れることに抵抗感が強いことも要因の1つかもしれません。
しかし、これからの介護施設経営は、ICT化を進めていかなければ、業務の生産性は著しく低下し、サービスの質、人員確保、利用者満足、業績などあらゆる面で苦しくなることが予測されます。
ICT化のメリットには、「業務的メリット」と「経営的メリット」の2種類があります。
業務的メリットとしては、
・効率化、生産性の向上
・コミュニケーションの向上(情報共有)
・精神的、肉体的負担の軽減
・エビデンスに基づいた介護の推進(科学的介護の推進) など…
やはり一番のメリットは事務作業の業務負担軽減です。
介護現場では、今でも手書きで記録をしているところも多く、同じ記録を複数個所に転記しているという場面もよく見かけます。これはかなり無駄な作業です。
ICT化することで、記録だけでなく、事故報告書や申し送りなど、あらゆるものが1つの記録で行うことも可能になります。
実際、厚生労働省の調査(令和元年度)によると、記録をICT化して、74%の事業所が業務が削減されたと回答し、その内、54%が6割以上の量が削減されたと回答しています。
実際、私も介護施設で介護記録のICT化(パソコン、タブレットの導入)の現場に立ち会いましたが、
慣れるまでは少し時間を有しますが、その後は格段に業務効率が上がります。
他にも、「インカム」や「見守り支援システム」などの導入も有効的です。
介護施設では、2名介助が必要な時や看護師に処置を依頼したい時など、スタッフを探すことが多くあります。「インカム」を活用することで、その時間は大幅に削減できます。
また、「インカム」は情報共有にも便利で、職員全体で共有したい内容などが、一瞬で全員に伝わりますし、漏れも防ぐことができます。当然、使い方のルールは必要ですが、コミュニケーションツールとしてもかなり効果的です。
「見守り支援システム」は、巡視に費やしていた時間をかなり削減することができます。特に夜間帯は大きな効果を発揮しますし、転倒リスクが高い方などの対応も考えると、職員の精神的負担の軽減にも繋がります。
また、利用者の覚醒状態がわかるものもあり、状態に合わせたトイレ誘導やおむつ交換を行うことで、可能な限り睡眠を妨げない介入ができるようになります。今まで感覚で行っていたことを、エビデンスを持って取り組めるようになることも大きなメリットであると言えます。
経営的メリットとしては、
・離職率の低下
・若手人材の確保
・人件費の削減(残業代など)
・ケアの質の向上 など…
業務負担の軽減は、精神的負担の軽減に繋がり、離職予防に大きな影響を及ぼします。
また、それは心の余裕にも繋がり、モチベーションの向上にも影響します。
採用に関しては、若手人材をいかに確保していくかは大きな課題です。
私は若手ではありませんが、これから介護施設に新たに就職するとした場合に、手書きの介護記録をしているところは、確実に候補から外します。これからICT・IOT化の波は加速し、標準化されてくることが予測されます。
営業マンがポケベルで連絡を取り合っている会社に就職したいですか?
極端な例ですが、それと同じような感覚です。
ICT化をしてすぐに効果が出るものではありませんが、長期的に見れば採用面でもメリットはあります。
また、これまで事務作業にあてていた時間をケアの時間にあてることで、ケアの質の向上も期待できます。そうすればスタッフのやりがいや介護職という仕事自体の魅力アップにもつながります。
人件費に関しても、業務が効率化できれば、人員配置の再検討や残業代の減少などにも繋げることができます。人員配置に関しては、人員を減らすということではなく、ICT・IOTを活用することで、人員を手厚くする場所を選べるようになるということです。そうすることで、業務効率も向上し、費用を抑えることに繋がります。
ICT・IOT化のデメリットとしては、
・導入コストが高い
・情報漏洩のリスク
・慣れるまで時間がかかる
・職員からの反発の声があがる など…
一番のデメリットは、導入コストの高さです。ICT・IOT化を実現するには、施設内全体にインターネット環境を整備したり、パソコンやスマホなどのデバイスを購入(レンタル)したりする必要があります。
個人情報を扱うため、情報漏洩にも気をつけなければいけないので、セキュリティ対策にも費用がかかります。
補助金もうまく活用し、しっかり費用対効果を見極めた上で、導入することが大切です。
導入するものや業者によっては、お試し期間を設けて、無料で貸し出してくれるところもあります。
また、導入前には、必ずと言っていいほど、スタッフからの反発の声があがります。
特に年配のスタッフからの反発は多く、中には「パソコンを使わないといけないのであれば、辞めます」というスタッフもいるぐらいです。
当然、導入後のメリットなども説明し、全員が納得して導入できることが望ましいですが、目先のことだけでなく、将来を見越した判断が経営者には求められます。
私の経験上、スマートフォンを使っている方であれば、ほぼ問題なく介護記録は対応できます。
導入してしばらくは、スタッフも操作に慣れていないので、教育やトラブル対応に時間がかかり、逆に残業コストがかさむこともあります。しかし、しっかりと教育を行えば、数カ月で落ち着き、スタッフも慣れてきます。
ICT化が急速に進みつつあるのが「介護記録」です。
現在も介護記録が手作業で行われている事業所も多くあります。そのため、同じ記録の転記作業も多く、メモ程度記録から、正式記録を書き込み、また、申し送り事項は別の用紙へ記入するなど…無駄な作業の温床となっています。
介護記録のICT化が進めば、上記のような無駄な作業が減り、情報共有も短時間で可能になります。タブレットを合わせて活用することで、より業務効率は高まります。
また、記録をデータ化することも容易になり、利用者の体調管理や、行動の傾向などデータを元に分析もしやすくなります。結果、エビデンスに基づいた、ケアの提供も可能になり、ケアの質の向上にも繋がります。
介護記録のICT化により、申し送り時間などによる情報共有も効率化が図れます。
また、インカムの導入により、スタッフを探す時間や、複数人に何回も行っていた情報共有も一度で済むようになり、漏れを防ぐ効果もあります。
PHSを携帯しているので、インカムは必要ないと言われる方もおられますが、正直、全くの別物です。
PHSは基本1対1のコミュニケーションしかできませんが、インカムは、1対多数のコミュニケーションが可能になります。
私も、導入前はそれほど効果かあるのかなと少し疑問に思っていましたが、使ってみるとインカムの効果は絶大であると感じています。特に大きな事業所ほど効果が実感できると思います。
最近、導入が多くなってきているのが、見守り支援ロボットをはじめとしたIoT機器です。バイタルデータなどを取得して離床や在室などを判断し、必要に応じて通知してくれるだけでなく、取得したデータを分析してケアプラン作成時の参考資料となるようにまとめてくれる機器まで登場しています。
以前、勤務していた有料老人ホームで、「見守り支援システム」導入後に行ったスタッフへのアンケート調査では、業務負担の軽減はもちろんですが、精神的負担の軽減が最も多い意見でした。
現場スタッフは、少ない人数で複数の利用者を対応しており、常に転倒や離設などの事故と隣り合わせで業務にあたっています。このシステムの活用により、事故予防という意味で、大きな精神的負担の軽減に繋がるということを私も改めに気づかされました。
スタッフの離職予防にも大きな効果を発揮すると感じています。
介護現場の業務負担軽減を目的に、ICT化、介護ロボットの導入を国も推進しており、補助金の充実を図っています。
補助金支援には、「ICT導入支援事業」と「介護ロボット導入支援事業」があり、それぞれ支援対象が違うものとなっています。導入するものが、どちらの対象になるのかしっかりと確認が必要です。
また、補助金は、地域医療介護総合確保基金を活用した支援であり、募集期間や補助額の設定は、都道府県が行っています。実際に補助金の申請を行う際は、都道府県とのやり取りとなります。
上記資料は、厚生労働省が出しており、
「地域医療介護総合確保基金を活用したICTの導入支援」をまとめたものです。
都道府県により、裁量の違いはあるようですが、
補助上限額は、職員の人数により、最大で260万円。
補助率は、一定の要件を満たす事業所は、3/4を下限に設定となっています。
上記資料は、厚生労働省が出しており、
「地域医療介護総合確保基金を活用した介護ロボットの導入支援」をまとめたものです。
介護ロボット導入に関しては、1機器(移乗・入浴支援)あたり上限100万円、その他上限30万円。
見守りセンサー導入の伴う通信環境設備は、上限750万円。
台数に関しても、制限なく、必要な台数が補助の対象となっています。
補助率は、都道府県の裁量によるが、一定の条件を満たす事業所は、3/4を下限に設定となっています。
補助金申請の流れは、以下の通りです。
①申請書類の提出
補助金の募集期間は都道府県によって異なります。募集期間を確認し、申請に必要な書類を一式準備し、郵送します。提出後、行政による申請内容の審査・交付の決定が行われます。
↓
②ICT・介護ロボット等の導入・実績報告書の作成
行政による申請内容の審査・交付の決定 が行われたら、介護ロボットの導入を行い、実績報告書を作成し、補助金請求を行います。行政により、補助金請求内容の確認・補助金の交付手続きが行われ、補助金が交付されます。
↓
③介護ロボット等の活用・目標及び効果報告書の作成
介護ロボット導入後の効果報告書を作成し、提出します。行政は報告書を確認し、導入効果の検証・公表を行います。
大きくは上記のような流れになります。都道府県により、申請書類などの違いがあります。各都道府県のホームページに必要書類や申請の流れなど、記載されていますので、詳細はご確認下さい。
今回は、介護施設のICT・IOTについて解説してきました。
国としても、介護人材の確保とともに、現場業務の効率化を推進しており、補助金の充実も図っています。
これからの介護施設経営において、ICT・IOTの活用が当たり前の時代となってくることが予測されます。
この波に乗り遅れていまうと、人材確保、サービスの質の向上、業績など、あらゆる面で厳しい状況に陥ってしまいます。
特に人材確保においては、この業界の転職の多さを考えると、一度、ICT・IOTの充実している施設で働くと、充実していない施設で働くことは心理的ハードルが非常に高くなります。
そのため、職員からも選ばれない事業所となってしまいます。
まだ、ICT、IOTの導入をされていない事業所の経営者、管理者の方は、少しでも早く導入に向けて取り組まれることをおススメ致します。
「介護施設での離職者が絶えない…」 「介護施設の利用者様を増やしたい…」など
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