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近年、介護事業所の数は増加傾向で、競争時代に突入しています。そのため、稼働率の低迷に悩んでおられる事業所も多いのではないでしょうか。
介護施設やデイサービスの稼働率で重要な役割りを担っているのが、「介護相談員」です。しかし、相談員がうまく機能していないことで、稼働率の低下に繋がっている事業所も多くあります。
この記事では、稼働率を向上させるために、改善すべき相談員業務について解説します。
経営者目線で、相談員業務において確認すべきポイントや、見るべき数字も紹介しますので、ぜひ最後までご覧下さい。
上記データは、施設別の利用者床数を表したものです。ここ数年で軒並み施設数(利用者床数)が増えていることがわかります。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった公的施設も右肩上がりです。
中でも、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、民間企業が参入しているものに関しては、急速に伸びていることがお分かりいただけると思います。
利用者にとって選択肢が多くなったことで、今まで数百人待ちなどと言われていた特別養護老人ホームでも、エリアにもよりますが、かなり待機者が減ってきている現状があります。
介護施設の安定経営において、「稼働率」は最重要指数の1つであり、収益に直結するものです。
その「稼働率」の維持・向上において、重要な役割を果たすのが、介護相談員です。
介護相談員とは、介護提供事業者と行政をつなぐ役割で、介護サービスの質向上を目的としています。
自治体によっては、介護相談員を派遣する事業があり、利用者さんの悩みや要望を聞くことで、介護サービスの質向上やクレーム防止につなげています。
相談員の役割・立場は、他の専門職と何も変わりありません。
しかし、実務的な役割はリーダー的存在を担います。それは、ベテランであろうと、新人であろうと関係ありません。
相談員は、施設利用に向けた利用者や家族の窓口となり、その情報を現場職員へ伝えていく役割があります。
一方、現場職員は、相談員の情報を元にサービスを提供しますので、業務の流れ(情報伝達の流れ)として、リーダー的な役割となってしまうのは仕方がありません。
そのため、相談員がうまく機能していないと、組織としてうまく業務や指揮系統が回らなくなります。
これは、稼働率においても同じことが言えます。当たり前ですが、リーダー的存在である相談員が稼働率に対しての意識が低ければ、稼働率の向上は見込めません。
相談員は、「相談援助」と「稼働率対策」の2つの役割を担い、ともに施設にとって非常に重要な役割となっています。
現場に出る経営者や管理者の方は日々感じておられるかもしれませんが、相談員の中には「稼働率を高めること抵抗感がある」人もいます。
介護施設では、現場を数年経験して、相談員になるというパターンが一般的。これは、現場を知ると言う意味でとても重要であり、私もこのパターンで相談員となりました。
しかし、現場を知っているがゆえの葛藤にぶち当たる相談員が多いのも事実です。
「この利用者さんが利用すると現場が大変になるだろうな…」
「今日、退居があったばかりなのに、明日新規の方が入居するって言ったら現場は何て言うだろうな…」 など
この辺りは、相談員になった直後はかなりの人が陥る思考だと思います。
稼働率を高める意識は、相談員だけが持つものではなく、施設全体で共有し追い求めていく必要があります。
経営者・管理者がしっかり表に立ち事業所の方針を示し、組織全体で同じ方向に向かっている状態を作り出すことが重要です。
とはいえ、現実問題として、現場職員全員にこの思考を持ってもらうことはかなり難しいです。せめて、現場リーダーにはこの考え方をしっかり伝え、共通理解をしておくことが大切です。
現場リーダーの役割やあるべき姿に近づけていく方法は下記の記事でも紹介しておりますので、あわせてお読みください。
【経営改善】介護事業経営の安定をもたらす「介護現場リーダー」の役割と重要性
介護施設における相談員の業務は多岐に渡ります。例えば、以下のようなものがあります。
介護施設によっても、さまざまですが、一般的には、上記のような内容が多いのではないでしょうか。経営者・管理者の方は、相談員がどのような業務にどれぐらい時間を費やしているか把握しておく必要があります。
そして、最も重要なことは、相談員の最重要業務である「入退所調整やそれに繋がる業務」が後回しになっていないかという部分を見ることです。
介護施設で本当によくあるのは、相談員が本来の業務に入れていない状況です。現場の人手不足など、さまざまな原因があることは重々承知していますが、「稼働率を上げること」をゴールにしたとき、このような状態は早々に改善しなくてはなりません。
繰り返しになりますが、相談員として最も重要な業務は「入退所調整やそれに繋がる業務」です。しかし、それだけしていればいいという状況ではない施設がほとんどです。
ショートステイの送迎や受診の付き添い、苦情対応、ボランティアさんの受け入れ対応、人手が足りなければ、現場の食事介助や入浴介助をお願いされることもあるでしょう。
当然、このような業務に入ることが悪いとうわけではありません。しかし、肝心な時に別の業務に入っていて、調整が後回しになってしまっていることがよくあります。
他の業務がどうでもいいというわけではなく、相談員としての業務を後回しにしてまで、他の業務を優先してしまっていると稼働率は必ず低下してきます。必要な時には「入退所業務」を優先できる環境を施設全体で作ることが重要になります。
また、相談員以外の方が対応できるようにしておくことも1つの方法です。
経営者や管理者の中には、自施設の稼働率について伺うと、相談員に任しているので…としっかり答えられない方がいます。これは、任せているというより放置に近い状態です。きつい言い方ですが、責任放棄です。
相談員の業務を管理するのが経営者・管理者の仕事です。
ただし、何から何まで事細かに業務を把握するマイクロマネジメントのようなやり方は好ましくありません。私も相談員をやっている際、色々と細かいことまで介入されると仕事がやりにくかった覚えがあります。
しっかり、要所を押さえて、後は任せるというやり方が望ましいでしょう。
では、具体的にどのような管理が必要なのでしょうか。以下の3つを押さえておくことが重要です。
順に解説していきます。
当たり前ですが、稼働率は日次でチェックします。
空室があれば、次の入居者の目処はあるのか、どこまで話が進んでいるのかなどの進捗をしっかり把握し、相談員の動きが遅ければ、時には背中を押すような声掛けも必要になります。
そのため、エクセルなどで稼働表を作成し、日々の動きが見えるようにしておくことはとても大切です。
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空室の定義には2つの種類があり、「退居時の空室」と「入院時の空室」です。どちらの空室が多いかによって、稼働率向上に向けた対策が変わってきます。
この二つの空室を理解し、稼働率向上に向けた原因と対策を考えいきます。
相談員は、目の前の業務をこなすことで手一杯になっていることも多くあります。経営者や管理者が現状をしっかり理解した上で、客観的な視点を持って対策の提案やアドバイスができることが望ましいでしょう。
「退居時の空室」とは、利用者が退居されてから、次の利用者が入居されるまでの空室期間です。
この期間の短縮には、相談員の調整能力が大きく影響します。
退居を見越して、次の調整への準備をいかにしておくかで空室期間にかなり差がでます。
具体的な対策について、別の記事で詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。
⇒【即日実践】介護施設の稼働率を向上させる具体的対策
⇒【稼働率向上】介護施設の「営業活動」の重要性と具体的方法
「入院時の空室」とは、利用者が医療機関に入院となった場合に発生する空室期間です。
病院の治療を早めることはできませんが、施設側として、調整レベルで入院期間を短縮することは意外とできます。そのためには、いかに病院の退院調整看護師やMSW(相談員)と連携を密にできるかが重要です。
待機者に声をかけたら断られ、実質的な待機者はいなかった…ということは、相談員の中ではよくあるトラブルです。しかしこれは、相談員の準備不足と言えます。
待機者がいなくなった状態で、新しい候補者を探し出すとなると、かなりの空室期間(稼働率の低下)を覚悟しなければなりません。
そのような状態を防ぐためにも、ただの待機者リストの管理ではなく、待機者を「待機者」と「即時入居待機者」に分類し管理することをおすすめします。
「待機者」 = 申込を受理している方
「即時入居待機者」= 申込を受理し、声を掛けたらすぐに入居希望がある方
正直、呼び方は何でも結構です。
この分類をしておくことで、実際空いた時の調整がスムーズになります。日々、確認する稼働表に、「待機者数」「即時入居待機者数」も入れ込んでしまえば、”見える化”でき、管理がしやすくなります。
今回は、介護施設における稼働率を上げる方法について、相談員業務を中心にご紹介させていただきました。
相談員は、稼働率の中心を担っています。業績に直結するものですので、これを機に相談員業務の再確認を行っていただき、業務の優先順位の明確化や内容の確認をしていたければと思います。
また、相談員は、経営層と現場の板挟み状態となっていることもよくあります。経営者や管理者が、相談員にとっていつでも相談できる存在であれば、とても心強いことです。
経営者・管理者の方には、相談員と現場がしっかり協力し合える状態を作り出すことも大きな役割です。
組織作りに関するコラム記事はこちらから
⇒【離職率改善】介護現場の人間関係を改善する「理念の浸透」の重要性
今回は、相談員業務を中心に解説しましたが、稼働率の向上にはさまざまな要素が必要です。他にも、ブランディングや営業強化、現場との連携など、施設によって課題は違います。自事業所の現状を分析し、何が課題で何に取り組めばいいのかを理解し、実践していく必要があります。
「介護施設での離職者が絶えない…」 「介護施設の利用者様を増やしたい…」など
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