【専門家監修】デイサービスの経営は厳しい?経営改善の方法を解説

デイサービスの経営は厳しいとよく耳にしますが、本当に厳しいのでしょうか。
デイサービスの経営安定化を図るためには、経営・運営・組織・職場環境・営業の5つを適正に保つことで成立します。

今回の記事では、介護業界のデイサービスにおける問題から業界トレンドをお伝えします。
また、具体的な解決策も記載しているので経営改善をしたい介護事業者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

デイサービスの現状

3723事業所が不足。適切に経営すれば赤字はあり得ない。

75歳以上人口は多くの都道府県で2025年まで急増し、2045年までは介護の需要は大きく伸び続けます。サービズの需要拡大伴ってデイサービスの需要は急激に増加します。2040年時点で3723事業所が不足する結果となりました。
まだまだデイサービスの需要はあると見て取れます。

弊社資料:2011~2019年までの介護事業所数から必要数の平均値を計算後、高齢者人口増加推移のデータを元に算出。
内閣府:高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告
厚生労働省:介護サービス施設・事業所調査の概況(2011~2019)

2020年の倒産件数・廃業・解散数は118件と過去最多ペース

介護のサービス体制が本格的になった2000年以降で介護事業所の過去最多の倒産件数は2017年と2019年の111件でした。しかし2020年はその倒産件数を上回る118件となり、過去最多の記録を更新しています。介護事業所の倒産件数のうち全体の32.2%(38件)がデイサービスの倒産件数で、コロナウイルスの影響で倒産した件数は8件と認められました。

コロナウイルスで倒産・閉業するのは仕方がありませんが、全体的にみれば将来の介護需要が一番高まる事業形態といえます。

デイサービスが倒産する3つの理由

スタッフの離職が多い

介護業界では慢性的な人手不足が原因で人材確保が困難になっています。

介護職を離職した理由は「職場の人間関係(23.20%)」が最多で、「結婚・出産・妊娠・育児(20.40%)」「理念や運営に不満(17.4%)」でした。

離職理由_介護士
介護労働安定センター:令和元年度_介護労働実態調査結果

管理者が育っていない

介護現場で利用者様のケアをおこなう介護従事者や事業所運営をサポートするのが管理者です。介護事業所の管理者がなぜデイサービスの経営に関係があるのかというと、管理者が介護事業所の経営を左右するからです。

デイサービス管理者の主な役割

管理者の仕事内容は事業所によって大きく異なりますが、収益が安定しているデイサービスは以下3つの管理体制の仕組みが整っています。

1.マネジメント 介護従事者の面接・採用・教育・人員配置をおこないます。
理念に沿った教育、人材採用コストや採用のマッチング、など事業所経営に係るKPI(重要指標)に深くかかわります。
2.マーケティング     営業のKPI(重要指標)の管理を主におこないます。
利用者様のリピート率・利用者数・CV率(コンバージョン)を把握し経営の安定に努めます。
3.行政書類管理市町村によって異なりますが基本的に3年に一度、市町村から実地指導が来ます。
実地指導というのは適切な介護保険事業が提供できているかという行政からのチェックのようなもので、書類に不備があった場合、介護事業所の指定取り消しになる可能性があるので該当書類が適切かどうかのチェックを月一回ペースでおこないます。

ひとつでも抜けがある場合、経営面・運営面の重要指標低下に繋がります。

他事業所との差別化が図れていない

デイサービスの集客について深くかかわるのが事業所の強みです。同じような売り方をしている介護事業所が近隣にあると新規参入は厳しいのが現状です。中には介護未経験者がデイサービスに参入する事例も相次いでおり、サービスの質が担保できていないというのも倒産の原因になり得ます。

デイサービスの経営改善策

事業所の運営目的・理念をスタッフ間で共有する

事業所の運営目的とは「地域にとってどんな役割を担うか」という基本的な介護事業所での立ち位置を示すものです。事業所の運営目的が明確でない場合、運営目的に沿った教育や採用ができなくなるので、ミスマッチが起きやすくなります。

  1. どういう利用者様のためのサービスか
  2. 私たちはどういう思いでサービスをするのか
  3. 利用者様にどんなサービスだと思って欲しいのか

以上3点を考え、スタッフ間と共有することにより理念共通した教育制度やスタッフ採用、営業の軸ができるので組織力が大幅に向上し、従業員の離職率・利用者満足度にも貢献します。

入職者ニーズを明確化し求人を見直す

採用面でうまくいっていない事業所の共通点は「入職者ニーズ」が把握できてない状態で求人をかけていることにあります。入職者ニーズとは「この事業所で働く給与以外の価値」です。

  1. 人間関係が良い
  2. 柔軟な働き方ができる
  3. 賞与がある
  4. 一日3時間~出勤可能
  5. 教育制度が整っている

どこの介護事業所でも給与以外の付加価値が存在するので、営業と同じく「事業所の強み」を求人に落とし込みアピールしましょう。

加算を算定する

デイサービスには多くの加算がありますが、特に介護職員処遇改善加算は介護スタッフの賃金に関わるので算定必須の加算になります。

個別機能訓練加算個別機能訓練加算Ⅰ | 単位数 46単位/日
個別機能訓練加算Ⅱ | 単位数 56単位/日
入浴介助加算単位数 50単位/日 = 約500円
栄養改善加算・口腔機能向上加算単位数 150単位/回 = 約1,500円
中重度ケア体制加算単位数 45単位/日 =約450円
介護職員処遇改善加算加算Ⅰ:介護職員1人当たり月額37,000円相当の加算
加算Ⅱ:介護職員1人当たり月額27,000円相当の加算
加算Ⅲ:介護職員1人当たり月額15,000円相当の加算
加算Ⅳ:介護職員1人当たり月額13,500円相当の加算
加算Ⅴ:介護職員1人当たり月額12,000円相当の加算

加算算定で介護事業者はこちら

スタッフの定着率をあげる

いくら求人費を割いて採用数をあげてもスタッフの定着率が悪いと、入職して3ヶ月以内に離職してしまったりします。介護従事者の離職率は全産業平均からしてもそこまで低くありませんが、有効求人倍率をみてみると5事業所に1人の割合で求人を出しているので、介護スタッフからすると仕事はいくらでもある状態です。

良い意味で、「辞めない職場作り」をすることが2045年以降生き残れる事業所か否かを決めるといって過言ではありません。

スタッフの定着率をあげるには

  1. 教育制度がしっかり整っている
  2. 仕事の悩みを気軽に相談できる環境がある
  3. 無駄な業務・会議がなくいい意味で楽できる

などが挙げられます。

営業戦略を徹底的に見直す

事業の理念から、ターゲットを明確にします。ターゲットが明確にできると「誰に向けて事業をするか」が把握できるので営業資料への落とし込みが容易にできますので、チラシ・パンフレット・ホームページに反映しましょう。
それだけで従来の1.5倍ほどKPI向上になったりします。

介護事業所の営業の課題がある介護事業者はこちら

チェックシートで経営レベル診断

今回はデイサービスの経営改善について解説していきました。
デイサービスの売上が上がらない、経営が安定しない理由は様々だと思いますが、何から手を付けるかを知るには経営課題の明確化が必要になります。

  1. 経営力
  2. 組織力
  3. 運営力
  4. 職場構築力
  5. 営業力

介護事業所の安定化に必要な5つの力を分析する診断ツールを専門家3名監修のもと作成しました。
ぜひ、デイサービスの経営改善に役立ててください。

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