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本記事では、通所介護における個別機能訓練加算について、制度の基本から算定区分の違い、報酬、必要書類、人員配置、運営指導対策までを一気に理解できるよう整理しています。
専門家 片山海斗のアドバイスを踏まえ、経営者・管理者が「知らなかった」「勘違いしていた」で損をしないための、実務視点に特化した完全ガイドです。
この記事でわかること

個別機能訓練加算とは、通所介護において、利用者一人ひとりの心身状態や生活環境に応じた機能訓練を、計画的に実施した場合に算定できる加算です。
個別機能訓練で最も重要なのは、「全員同じ内容」ではないという点です。
よくある誤解として、
といった取り組みを「個別機能訓練」と認識しているケースがありますが、原則として算定対象にはなりません。
機能訓練とは、
といった日常生活動作の維持・向上を目的とした訓練です。
近年はさらに、
などの手段的日常生活動作や、社会参加まで含めた支援が重視されています。

この区分の違いを理解するうえで、最初に押さえておきたいのがLIFE(科学的介護情報システム)への情報提出の有無です。
個別機能訓練加算は、単に「訓練を実施したかどうか」だけでなく、その訓練が利用者の状態改善・維持にどう結びついているかを、データで説明できるかという視点で区分されています。
特にⅠ(ロ)・Ⅱでは、LIFEへの情報提出が算定要件となっており、これは国が介護報酬を「実施量重視」から「アウトカム(結果)重視」へ転換している明確なメッセージです。
LIFEは、利用者の心身機能、ADL(日常生活動作)、訓練内容、評価結果などを全国で集約し、科学的に有効性が検証できる介護かどうかを判断する基盤として位置づけられています。
参考:科学的介護情報システム(LIFE)スタートガイド(厚生労働省)
個別機能訓練加算Ⅰ(イ)は、「利用者ごとに訓練内容を考え、計画を立てて実施しているか」を評価する、個別機能訓練加算の基本となる区分です。
ポイントは、「個別」という言葉の通り、全員同じ体操・同じプログラムではなく、その人の身体状況・生活課題に合わせた訓練になっているかどうかです。
生活との強い結びつきや、LIFEへのデータ提出までは求められておらず、まずは「計画を作る → 実施する → 記録を残す → 定期的に見直す」という基本的な流れがきちんと回っていることが重視されます。
個別機能訓練加算に初めて取り組む事業所が、最初に目指すべき区分と考えると分かりやすいでしょう。
個別機能訓練加算Ⅰ(イ)で最も重要なのは、個別機能訓練計画書と実施記録の内容が一致していることです。
機能訓練指導員が計画作成に関与していることが分かり、訓練内容・実施状況・評価が一連の流れとして説明できれば、大きな問題になることは少なくなります。
個別機能訓練加算Ⅰ(ロ)は、Ⅰ(イ)を土台としながら、「その訓練が、実際の生活にどう役立つのか」まで踏み込んで評価する区分です。
Ⅰ(イ)との最大の違いは、訓練内容が「身体機能の向上」だけで終わっていないか、生活場面(自宅・外出・トイレ・入浴など)に結びついているかが明確に求められる点です。
たとえば、「下肢筋力向上」ではなく「自宅トイレでの立ち上がりを自立して行うための下肢訓練」といった形で、目的と生活課題が見える計画が必要になります。
書類の中身が一段階レベルアップするため、運営体制がある程度整ってきた事業所向けの区分といえます。
Ⅰ(ロ)では、訓練内容が利用者の実際の生活課題と結びついていることを、書類から読み取れるかが最大のポイントです。アセスメントで把握した生活状況が計画に反映され、評価結果が次の計画に活かされているかを説明できることが求められます。
個別機能訓練加算Ⅱは、「個別機能訓練を、データに基づいて改善しているか」を評価する、いわば質を問う区分です。
この区分では、LIFE(科学的介護情報システム)への情報提出が必須となり、国が進める「科学的介護」を実践できているかどうかが判断されます。
単に現場で頑張っているだけではなく、その結果を数値や評価として可視化し、次の計画にどう活かしているかまでが求められます。
そのため加算Ⅱは、制度理解・記録整備・マネジメント力が揃っている事業所向けの区分と考えると分かりやすいでしょう。
加算Ⅱでは、LIFEへの情報提出だけでなく、そのフィードバックを訓練内容の見直しに活用していることが重要です。LIFEの内容と個別機能訓練計画書・評価記録が整合しており、データに基づいた改善が行われていることを示せなければ算定リスクが高まります。
専門家の声「個別機能訓練加算Ⅰ(ロ)やⅡは、なぜLIFEが必要なのか分からないまま算定している」という声をよく聞きます。
最近の実地指導の場では、LIFEの提出状況だけでなく、個別機能訓練計画書・評価記録とLIFEの内容が一致しているかまで確認されるケースが増えています。
区分の違いは、単なる報酬差ではなく、事業所の運営レベルを問われる違いだと考えた方が安全です。




個別機能訓練加算の区分の違いは、「訓練の内容」そのものではなく、LIFEを通じて科学的に説明できる介護を行っているかどうかにあります。
特にⅠ(ロ)・Ⅱでは、計画書・訓練記録・LIFEの内容が一致していない場合、運営指導で指摘や返還につながるリスクが高まります。
| 項目 | 個別機能訓練加算Ⅰ(イ) | 個別機能訓練加算Ⅰ(ロ) | 個別機能訓練加算Ⅱ |
|---|---|---|---|
| 対象サービス | 通所介護 | 通所介護 | 通所介護 |
| LIFEへの情報提出 | 不要 | 必須 | 必須 |
| 機能訓練指導員の配置 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 個別機能訓練計画書の作成 | 必須 | 必須 | 必須 |
| 訓練内容 | 日常生活動作(ADL)の維持・改善を目的とした個別訓練 | 同左 | 同左 |
| 評価・見直し | 定期的に実施・記録 | LIFE提出データを踏まえて実施 | LIFE提出データを踏まえて実施 |
| 記録の整合性 | 計画・訓練・記録の一致が必要 | 計画・記録・LIFE内容の一致が必要 | 同左 |
| 運営指導でのチェック | 計画と実施内容の乖離 | LIFE内容との不一致 | LIFE内容との不一致 |
| 経営・運営難易度 | 低〜中 | 中 | 中〜高 |



実地指導では、この表の「LIFE」「記録の整合性」の列がそのままチェック項目になります。
「どの加算を算定するか=どこまで運営体制を整えられるか」を、経営判断として考えることが重要です。




個別機能訓練加算は、1単位あたりの報酬額だけを見ると「そこまで高くない加算」に見えがちです。
しかし、通所介護においては“積み上げ型”で経営に効いてくる加算であり、算定の有無が年間売上に大きな差を生むケースも少なくありません。
通所介護における個別機能訓練加算は、利用者1人・1日あたりで算定されます。
そのため、稼働率が高い事業所ほど、経営インパクトは大きくなります。
例えば、
という一般的な通所介護事業所の場合、1日数十単位の差であっても、それが「24名 × 22日 × 12か月」と積み上がることで、年間では数十万円〜100万円単位の差になることがあります。



現場でよくあるのが、「忙しいから」「人が足りないから」と個別機能訓練加算を取っていない事業所です。
しかし、年間ベースで数字を整理すると、人件費1人分に近い差額が出ているケースもあり、「もっと早く整備しておけばよかった」と言われることが本当に多いです。
個別機能訓練加算を算定するためには、「事業所内で整備・保管しておくべき書類」と「提出・提示が求められる書類」を正しく理解しておく必要があります。
① 個別機能訓練計画書
※Ⅰ(イ)・Ⅰ(ロ)・Ⅱすべてで必須
② 個別機能訓練の実施記録
「計画書どおりに訓練が行われているか」を確認するための重要書類です。
③ 評価記録・モニタリング記録
評価がない場合、「訓練をやりっぱなし」と判断されるリスクがあります。
④ LIFE(科学的介護情報システム)への提出データ【LIFE提出が必要な場合の追加書類(Ⅰロ・Ⅱ)】
個別機能訓練加算Ⅰ(ロ)・Ⅱでは、利用者の以下の情報をLIFEへ提出する必要があります。
重要なのは、LIFEに提出している内容と、計画書・記録の内容が一致していることです。



実地指導では、「LIFEには入力しているが、計画書と内容が違う」ケースが非常に多いです。LIFEは独立した作業ではなく、日々の記録の延長線上にあるものだと理解する必要があります。
| 書類 | 主な提出・提示先 |
|---|---|
| 個別機能訓練計画書 | 原則:事業所で保管/運営指導時に提示 |
| 実施記録・評価記録 | 原則:事業所で保管/運営指導時に提示 |
| LIFE提出データ | LIFEシステム(厚生労働省) |
| 体制届・加算届出 | 指定権者(市町村・都道府県) |
個別機能訓練加算を算定するには、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」(加算の届出)を都道府県知事や市町村長などへ提出していることが前提です。


個別機能訓練加算では、機能訓練指導員の配置が必須要件です。
主な対象職種は以下のとおりです。
いずれも「配置している」だけでなく、個別機能訓練に実際に関与していることが記録で確認できる必要があります。
また、機能訓練指導員は、専従である必要はありません。多くの通所介護事業所では、以下のような兼務体制を取っています。
ただし、兼務の場合は「どの時間帯に、誰が、どの利用者に訓練を行ったか」を明確に説明できる体制が必要です。




個別機能訓練加算では、アセスメントから計画、実施、評価、見直しまでを一連の流れとして適切に行っていることが求められます。
以下は、個別機能訓練を提供する際の基本的なサービス提供の流れです。
個別機能訓練加算は、正しく選定・運用すれば経営を安定させる一方で、選び方や理解を誤ると、返還リスクを一気に高めてしまう加算でもあります。
ここでは、実際の運営指導・実地指導の現場で多い「やってしまいがちな選定ミス」と、その結果起こり得るリスクと解決策を解説します。
想定されるリスク
本来どうすれば良かったのか
想定されるリスク
本来どうすれば良かったのか
想定されるリスク
本来どうすれば良かったのか
想定されるリスク
本来どうすれば良かったのか



個別機能訓練加算に関する算定ミスの多くは、現場の努力不足ではなく、制度を「点」で捉えてしまっていることが原因です。
区分選定、計画書、記録、LIFE、人員配置は、本来それぞれ独立したものではなく、一連の運営フローとしてつながっているものです。
実地指導では、「やっているかどうか」よりも、「なぜその運営をしているのかを説明できるか」が問われます。
つまり、書類が揃っているか以上に、経営者・管理者が全体像を理解しているかが評価の分かれ目になります。
算定可能ですが、「関与の実態」が明確であることが前提です。機能訓練指導員について常勤・非常勤を問わず算定可能とされています。
ただし、重要なのは雇用形態ではなく、個別機能訓練計画の作成や訓練内容の評価・見直しに実質的に関与しているかどうかです。運営指導では、「名前だけの配置ではないか」が確認されます。非常勤の場合でも、関与内容が記録で説明できれば問題ありません。
いいえ。提出しているだけでは算定できません。個別機能訓練加算Ⅱでは、LIFEへの情報提出に加えて、LIFEからのフィードバックを活用し、訓練内容や計画を見直していることが算定要件となっています。
まで説明できなければ、運営指導では算定要件未達と判断される可能性があります。LIFEは「提出作業」ではなく、運営改善のツールとして活用しているかが問われています。
個別機能訓練加算は、通所介護において単なる収益加算ではなく、事業所の運営力や管理体制がそのまま評価される加算です。
2024年度の介護報酬改定以降、国は「実施しているか」ではなく、「その取り組みが利用者の生活機能の維持・改善につながっているか」をより重視するようになっています。
運営指導の現場では、計画書や記録が存在するか以上に、計画・実施・評価・見直し、そしてLIFEまでを一連の流れとして説明できるかが確認されます。
区分選定や書類整備を後回しにしたまま算定を続けると、返還リスクが高まる点には注意が必要です。
一方で、自事業所の体制に合った区分を選び、無理のない運用を積み重ねていけば、個別機能訓練加算は決して難しい加算ではありません。
制度を正しく理解し、日常業務の中で自然に回る仕組みを作ることができれば、個別機能訓練加算は経営を守り、事業所の価値を高める重要な要素になります。
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