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ターミナルケア加算とは?訪問看護で必須の算定要件など基礎から解説

ターミナルケア加算

ターミナルケア加算の算定では、「計画への同意を得るタイミング」や「訪問記録の残し方」に迷うことがあります。要件を理解していても、実際の運用や記録方法に不安を感じる事業所は少なくありません。

本記事では、運営指導で求められる視点も踏まえながら、ターミナルケア加算の要件と実務上のポイントを解説します。

この記事でわかること

  • ターミナルケア加算の具体的な算定要件と保険適用のルール
  • 運営指導で指摘されにくい同意取得と記録の残し方
  • 加算取得を持続させるための経営的視点と業務効率化のヒント
目次

ターミナルケア加算とは?

ターミナルケア加算のイメージ

制度の全体像や目的を把握することで、現場のスタッフが同じ方向を向いてケアにあたれるようになり、利用者やご家族への説明もスムーズになります。

ターミナルケア加算は、住み慣れた自宅や地域で最期を迎えたいと願う利用者に対して、身体的な苦痛の緩和や精神的な支援を提供する体制を評価するものです 。とくに訪問看護事業所は、在宅での看取りの要として非常に重要な役割を担っています。医療的ケアの依存度が高い利用者や、終末期を迎えて状態が急に変動しやすい利用者に対して、昼夜を問わず連絡を受け、必要に応じて迅速に駆けつけることができる環境が強く求められています。

2024年(令和6年)4月の介護報酬改定において、訪問看護のターミナルケア加算は、これまでの2,000単位から2,500単位(死亡月)へと大きく引き上げられました 。この引き上げの背景には、国が在宅での看取り体制をさらに強化し、医療機関への過度な依存から地域全体での支え合いへ移行させたいという強い意図があります 。評価が高まった分、事業所に対しては、単に「最期まで看取った」という結果だけでなく、そこに至るまでの過程において、医師や他の関係機関とどう連携し、利用者や家族の意思をどのように尊重したかという「プロセスの透明性」が問われるようになっています。

事業所としては、加算の要件を正確に理解し、属人化しない運用の仕組みを整えることが急務となっています。体制構築の一環として、介護マニュアルの作成方法を見直し、ターミナルケアの開始から終了(死亡時の対応やご家族への精神的なケア)までの手順を明確化しておくことも、業務の標準化に大きく役立ちます。

ターミナルケア加算(訪問看護)の算定要件と対象者の基準

複雑にみえる算定要件も、対象者の条件や日付、訪問回数の決まりを一つひとつ分解して理解することで、現場での判断に迷いがなくなります。

訪問看護におけるターミナルケア加算を算定するためには、複数の厳格な要件をすべて満たし、それを客観的な記録として残しておく必要があります 。ここから、介護保険を適用する場合の具体的な要件を要素に分けて解説します。

まず、対象となる利用者は、主治医によって医学的な知見に基づき「回復の見込みがない」と診断され、終末期にあると判断された方です 。要介護認定(要介護1から要介護5)を受けていることが前提となり、要支援の認定者は対象外となります。

訪問回数に関する要件としては、利用者の死亡日および死亡日前14日以内(計15日間)に、2日以上訪問してターミナルケアを実施していることが求められます 。この期間内に、十分な状態観察と苦痛の緩和、ご家族への支援を行う必要があります。さらに、ターミナルケアの提供にあたっては、主治医と密に連携をとり、どのような医療的処置を行うか、あるいは行わないかについて、事前の計画を立案しなければなりません 。そして、その計画について利用者本人およびご家族に十分に説明し、合意を得ることが必須となります 。

訪問看護のターミナルケア加算における算定要件と医療保険の線引き

保険の切り替わりで生じやすい事務的な混乱を未然に防ぐため、医療保険のルールも合わせて確認しておくと、請求業務への不安が大きく軽減されます。

訪問看護の場合、利用者の年齢や疾患、状態によって介護保険と医療保険のどちらが優先されるかが変わります。ターミナル期においては、厚生労働大臣が定める特定の疾病(別表第七)に該当したり、主治医から急性増悪などに伴う特別指示書が交付されたりすることで、一時的に医療保険での訪問看護に切り替わることが頻繁に起こります

医療保険における評価は「訪問看護ターミナルケア療養費」と呼ばれ、介護保険の加算とは単位数や金額、対象者が異なります。

項目介護保険(ターミナルケア加算)医療保険(ターミナルケア療養費)
評価額(2024年度)2,500単位/月療養費1:25,000円、療養費2:10,000円
算定のタイミング死亡月死亡月
訪問要件死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上訪問死亡日及び死亡日前14 日以内の計 15 日間に訪問看護基本療養費、精神科訪問看護基本療養費、退院支援指導加算又は包括型訪問看護療養費のいずれかを合わせて2回以上算定
事前の届出自治体への届出が必要原則不要(関連加算は届出が必要な場合あり)

上の表は、医療保険と介護保険におけるターミナルケア関連の評価額と要件の違いを整理したものです 。医療保険の療養費1は在宅で死亡した場合など、療養費2は特別養護老人ホーム等で死亡し、かつ介護保険の看取り介護加算を算定している場合などが対象となります

参考:訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う 実施上の留意事項について(厚生労働省)

訪問看護のターミナルケア加算で運営指導時に指摘されやすいポイント

ターミナルケア加算のサインイメージ

過去の指導事例から、どこが弱点になりやすいかを知っておくことで、無駄な返還リスクを大きく減らし、自信を持ってケアを提供できるようになります。

運営指導(実地指導)において、ターミナルケア加算は行政の担当官が非常に細かくチェックする項目のひとつです。要件を満たしていないと判断されれば、過去に遡って多額の介護報酬の返還を求められるリスクがあります。実地指導・対策のポイントを押さえ、日頃から証拠を整えておくことが求められます。

運営指導の場で、担当官が利用者のカルテを開き、「ご家族へターミナルケアの計画を説明し、同意を得たという記録の日付が、実際のケア開始日よりも後になっていますね。これでは事前の合意があったとは認められません」と指摘する場面が頻繁に起きています。管理者が「急な状態悪化で口頭での説明を優先しました」と弁明しても、客観的な書類の日付が矛盾しているため、要件を満たしていないと判断されてしまいます。

現場で起きやすい落とし穴(ミス)2つとその対策を確認しておきます。

「同意取得と書類作成の遅れ」が挙げられます。
原因は、利用者の急激な状態変化に事務作業が追いつかないことや、ご家族が死を受容できていない段階で「ターミナル」という言葉を出すことをスタッフが躊躇してしまうことにあります。
この防ぎ方として、初期のアセスメントの段階から、将来的な状態変化を見据えた説明のひな形を準備しておくことが有効です。主治医の診断が出た直後に、時間を空けずにご家族と面談し、段階的に見通しを共有して記録を残す体制を構築します。

訪問記録の内容が「状態不変」「特記なし」といった定型文の連続になっているケースです。
終末期にある利用者の状態がまったく変化しないことは考えにくく、このような記録は「適切な状態観察や苦痛の緩和が行われていない」とみなされる原因になります。

専門家の声

運営指導において、ターミナル期の記録は最も厳しく見られる項目のひとつです。単なる状態観察ではなく、多職種とどう連携し、どう方針を共有したかという『プロセスの記録』が返還リスクを抑える最大の防具になります。

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行政に指摘されにくい証拠の残し方と記録の具体例

指導官が納得する客観的な記録の書き方を押さえておくと、日々の記録業務の負担軽減にもつながり、何を書くべきか迷う時間が減ります。

一生懸命ケアをしていても、記録がなければ評価されません。ターミナルケアを行ううえで、記録の保持が強く求められています。

ターミナルケアの提供には、次の事項を記録する必要あり

ア)終末期の身体症状の変化及びこれに対する看護についての記録

イ)療養や死別に関する利用者及び家族の精神的な状態の変化並びにこれに対するケアの経過についての記録

ウ) 看取りを含めたターミナルケアの各プロセスにおいて、利用者及び家族の意向を把握し、それに基づくアセスメント及び対応の経過の記録

(注)一人の利用者に対し、一か所の事業所のみが算定可能

出典:運営指導における主な指摘 事項について (第2部 算定編)(東京都福祉局)

この指定基準が求めるのは、単に「訪問した」という事実だけでなく、終末期特有の変化への対応が記録に具体的に残っている状態です 。行政に指摘されにくい証拠の残し方として、日々の訪問記録には次の要素を意識して盛り込むことが求められます。

  • 終末期の身体状況の変化(呼吸状態、痛みの程度、意識レベルなどの客観的な評価)
  • 療養上の不安や苦痛に対するケアの内容(具体的な緩和ケアの実施状況や薬剤の効果)
  • ご家族への精神的支援や介護方法の指導内容(疲労度への配慮や予期悲嘆へのサポート)
  • 医療機関やケアマネジャーとの連携状況(誰に、いつ、何を報告し、どう指示を受けたか)
  • 本人およびご家族の意思確認の内容と時期(蘇生処置を望まない等の意向の再確認)

とくに痛みの記録については、「痛みの訴えあり」という抽象的な表現を避け、「痛みの評価スケール(NRS)で8の痛みに対し、指示された鎮痛剤を使用し、30分後にNRS3へ軽減した」といった、誰が読んでも変化と対応がわかる粒度で残すことが重要です。記録を充実させるためには、基礎となるアセスメントの質を高めることが不可欠です。アセスメント作成方法を見直し、スタッフ全員が同じ視点で状態を捉えられるように教育しておくことが、結果的に強い記録を作ることにつながります。

書類は、ゼロから作ると時間が溶けます。記入例があるだけで迷いが減り、現場にも回しやすくなります。ひな形や記入例が必要な方は、資料(チェック表)も確認しておくと安心です。介護の法令遵守の観点からも、同意書や計画書などの必須書類は適切に管理し、いつでも提示できる状態にしておくことが大切です。

ターミナルケア加算(訪問看護)の算定要件を支える多職種連携

ターミナルケア加算の多職種連携のイメージ

自社単独ではなく、地域の他機関と情報を共有する仕組みを作ることで、より質の高い看取りとスタッフの心理的な安全を確保できます。

ターミナルケアを高い質で提供するためには、訪問看護事業所だけでなく、地域の主治医、居宅介護支援事業所のケアマネジャー、訪問介護のヘルパー、福祉用具専門相談員など、多様な職種との密接な情報共有が欠かせません 。利用者の状態が日単位、あるいは時間単位で急変する中で、関係者が同じ方針に向かって動けるかが鍵となります。

定期的な多職種連携の会議(カンファレンス)を開催し、利用者の痛みの状態やご家族の介護負担について話し合うことが推奨されます 。ケアマネジャー側でも「ターミナルケアマネジメント加算」を算定する場合があり、訪問看護ステーションからの適時適切な情報提供が必須となります。互いの加算要件を理解し合い、情報共有シートなどを活用することで、連絡の漏れを防ぐことができます。

同時に、看取りに関わるスタッフの心理的負担にも目を向ける必要があります。患者の死に向き合うことは、どれほど経験を積んだ看護師であっても大きな精神的ストレスを伴います。とくに若いスタッフや経験の浅いスタッフが孤立しないよう、事業所内での振り返り(デブリーフィング)の場を設けることが重要です。

不安や悩みを率直に話し合える心理的安全性の高い組織風土を築くことで、燃え尽き症候群(バーンアウト)による離職を防ぐことができます。看取り対応のスキルアップに向けた個別研修計画の立て方を整備し、事業所全体でターミナルケアの質を底上げする姿勢を示すことが、結果的に利用者の安心へとつながっていきます。令和7年度 介護賃上げ補助金などの制度を活用し、働きやすい職場環境の整備に投資することも一つの選択肢です。

他の介護サービス(老健など)におけるターミナルケア加算の算定要件

他のサービスがどのような要件で動いているかを知ることで、施設との連携や引き継ぎがより円滑に進み、利用者に最適な提案ができるようになります。

訪問看護だけでなく、介護老人保健施設(老健)や定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護など、他の介護保険サービスでもターミナルケア加算が設けられています 。地域の連携先がどのような算定構造で動いているかを知っておくことで、退院支援や在宅移行時のコミュニケーションが円滑になります。

たとえば、介護老人保健施設におけるターミナルケア加算は、訪問看護のような月額の定額制ではなく、死亡日を基準として遡った日数に応じて1日あたりの単位数が設定されています 。2024年の改定では、死亡日の前々日からの評価により重点が置かれる形へ変更されました

ターミナルケアの実施タイミング単位数(老健の場合)
死亡日45日前~31日前72単位/日
死亡日30日前~4日前160単位/日
死亡日前々日、前日910単位/日
死亡日1,900単位/日

上の表は、介護老人保健施設におけるターミナルケア加算の実施タイミングごとの単位数の違いを示すものです 。訪問看護とは異なり、施設内で長期間にわたって看取りのケアを提供することを想定した設計となっています。

こうした他サービスとの違いを理解しておくと、訪問看護として施設へ介入する際や、自宅から施設へ看取りの場を移行する際に、それぞれの制度の境界線で支援が途切れるのを防ぐことができます。利用者とそのご家族にとって最も負担の少ない選択肢を提案できる事業所は、地域のケアマネジャーや医療機関からも厚い信頼を得やすくなります。

ターミナルケア加算取得の維持コストと収益の分岐点

加算を取るための投資と得られる収益のバランスを見極め、無理のない持続可能な経営方針を定める材料になります。

ターミナルケア加算を取得できる体制を整えることは、事業所の収益向上に寄与する一方で、24時間対応体制の維持や、重度者対応のための看護職員の継続的な教育など、先行する投資と見えない維持コストが発生します。

加算を取得するためには、どの選択が中長期で効率が良いかを冷静に計算する視点が必要です。ターミナルケア加算単体の収益(2,500単位)だけでなく、緊急時訪問看護加算(介護保険:574単位/月)や特別管理加算など、関連する加算との相乗効果を含めて全体の採算ラインを計算します 。同時に、夜間のオンコール待機手当や、出動時の時間外手当といった直接的なコストと、現場の疲弊を防ぐための人員の余裕を持てるかを軸に判断します。

専門家の声

経営的な視点で見ると、看取りの体制強化は地域のケアマネジャーに対する強力な営業材料になりますが、自社の対応キャパシティを超えて受け入れると、日中の通常業務が圧迫され、結果として職員の大量離職を招くリスクがあります。安全に運用できる上限件数を設定することが重要です。

体制を維持するための労力と、不備があったときの返還リスクを天秤にかけ、自社の現在の規模とスキルセットでどこまで対応するかを明確にしておくことが、健全な事業所運営の要となります。

ターミナルケア加算の算定要件を満たすための書類作成と業務効率化

日々の煩雑な書類業務を効率よく回す方法を取り入れることで、スタッフが本来のケアに集中できる時間を確保できます。

ターミナルケア加算の算定においては、アセスメントシート、訪問看護計画書、同意書、そして毎回の訪問記録がすべて整合性を持って連動している必要があります。しかし、これらを紙媒体や手入力中心のシステムで管理していると、どうしても転記ミスや更新漏れが発生しやすくなります。

忙しい業務のなかで、更新漏れや書類の抜けが出やすいのが現実です。とくに同意書の日付や、計画の更新タイミングは、人の目視だけで管理を続けると運営指導の際に指摘の火種となります。更新や抜けが怖いなら、仕組みで回す選択肢もあります。プロケアDXを使って、必要な書類作成と運用の管理をまとめて行うことで、自動的に期限を可視化し、属人化を防ぐ方法も考えられます。

書類作成の負担が減ることで、看護師はご家族との対話や、利用者の苦痛緩和のケアといった、人にしかできない専門的な業務により多くの時間を割くことができるようになります。

よくある質問

ターミナルケアを実施中に状態が急変し、医療機関へ搬送されて亡くなった場合、加算は算定できるのでしょうか。

搬送後24時間以内に死亡が確認された場合は、ターミナルケア加算の算定対象となります。
現場での運用として、病院へ搬送された時刻と死亡が確認された時刻の記録を正確に残すとともに、それまでに要件を満たす訪問回数(死亡前14日以内に2回以上など)をこなしていたことを説明できる証拠を整えておくことが重要です 。

ターミナルケア加算の対象者は誰でしょうか。

要介護認定で「要介護1」から「要介護5」までのいずれかの認定を受けており、かつ医師によって終末期にあると判断された利用者です。「要支援1」「要支援2」の方は対象外です。

訪問看護ターミナルケア療養費の対象者は誰でしょうか。

訪問看護ターミナルケア療養費の対象者は、医療保険による訪問看護を利用し、在宅でターミナルケアを受けた後に死亡した利用者です。主に末期がん患者や医療保険適用で訪問看護を受けている方が対象となります。なお、算定には一定の要件が定められています。

まとめ

訪問看護におけるターミナルケア加算の要件と、運営指導に耐えうる証拠の残し方について確認してきました。要点を改めて確認しておきます。

  • 2024年の報酬改定により、介護保険のターミナルケア加算は2,500単位(死亡月)へ引き上げられ、役割の重要性が増している
  • 死亡日前14日以内に2日以上訪問し、多職種と連携した計画作成と事前の同意取得を完了させておく必要がある
  • 日々の記録には、状態不変で済ませず、具体的な苦痛緩和やご家族への精神的支援の内容を明記する
  • 経営面では、関連加算を含めた収益性と、24時間対応を維持するスタッフの負担軽減のバランスを見極める

ここまで読んでも、結局「自社だとどの記録の形が現実的か」「同意を取るフローをどう定着させるか」で迷うことがあります。その場合は、無料経営相談で状況を一度整理し、優先順位だけ先に決めてしまうと進めやすくなります。まずはいまの体制で満たせる要件と崩れやすい運用を切り分けるところからで十分です。少しでも不安や負担を感じているなら、一緒に最適な運用方法を見つけていきましょう。

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