全国の対応・少数精鋭の介護コンサルティングチーム

0120-186-361

介護経営ラボ

【解説】介護施設経営に重要な組織の生産性を高める「目標設定」の方法

監修者

小寺智久

介護経営コンサルタント。介護業界歴14年。現場の介護職員からスタートし、支援相談員、営業、施設統括、経営管理など、京都の大手医療法人の介護事業部でさまざまな業務を経験。特養、老健、グループホーム、介護付き有料老人ホームなどの施設経験と、100名以上の管理者・リーダーと関わってきた経験から、施設経営のサポートを行っている。
介護組織力

別のコラムでも何度もお伝えしていますが、介護業界の一番の課題は「人手不足」です。
2025年には32万人、2040年には、69万人の介護人材が不足すると言われています。

これからの介護現場は、少ない人数でサービスの質の維持・向上が求められています。それを実現するために、業務の無駄の排除や効率化が求められおり、ICT・IOTの導入なども徐々に進んできています。

それと同時に、組織(チーム)の成長が求められます。人手が少ない中では、チームの連携、すなわちチームワークの向上が不可欠です。チームワークが向上すれば、業務の生産性も上がります。

チームワークの向上において、重要なものの1つが組織(チーム)の目標設定です。目指すべき目標やルールが明確になっているかどうかで、業務の判断スピードやケアの質も変わってきます。

今回は、組織の目標設定を中心に目標とは何か、具体的な目標設定の仕方を解説致します。経営者・管理者の方はぜひ最後までご覧下さい。

介護業界の現状

冒頭でもお伝えしましたが、日本の少子高齢化は更に進み、これから介護業界は、更なる人手不足が見込まれています。介護人材の全体数は増え続けていますが、需要と共有が追いついてないのが現状です。

https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804129.pdf
厚生労働省:第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
※この統計には退職者・離職者は含まれていない

組織(チーム)の「目標設定」の重要性

チームとは何か?「グループ」と「チーム」の違い

経済学者チェスターバーナードは、著書「経営者の役割」において、組織成立の3つの要素を定めています。
それは、「共通目的」「意思疎通」「貢献意欲」の3つです。

組織は、個人が1人では実現し得ないこと(共通目的)を、2人以上の人間が相互に意志を伝達しながら(意思疎通)、その目標に貢献しようとする意欲を持って(貢献意欲)、達成を目指すときに成立すると定義しました。

また、グループとチームの違いは、「共通の目標」あるかどうかだとも言われています。
「共通目標」がない組織は、単なグループであり、チームにはならないということです。

強い組織(チーム)とは?

強い組織(チーム)とはどのようなものをいうのでしょうか。
以前、別のコラム記事で紹介させていただいた、マトリクスを参考に解説致します。

上の図は、組織のパターンを、「理念(目標)・ルールの浸透度」と「関係性(コミュニケーション・情報伝達)」の2軸で表したものです。共に高いカテゴリが、④一体感のある組織となり、強い組織であると言えます。

それぞれの組織の特徴については、別のコラム記事で解説していますので、こちらへどうぞ。
【離職率改善】介護現場の人間関係を改善する「理念の浸透」の重要性

何が言いたいかと言いますと、強い組織を作るためには、「目標設定」はとても重要であり、必要不可欠なものであるということです。単純に考えても、ゴールや目指すべきところがない状態では、メンバーの力は分散してしまい、関係性の悪化などにも繋がることは容易に想像できるでしょう。

介護現場では、目標が曖昧な組織が多い

私は今まで、多くの介護施設をみてきましたが、介護の現場において、「意思疎通」と「貢献意欲」は比較的条件を満たしているところが多いです。しかし、「共通目標」が曖昧で、組織(チーム)としてまとまれていない集団が多いと感じています。

ほとんど介護施設では、「理念」や「方針」が存在しますが、
それを本気で目指せているでしょうか…
お飾りになっていないでしょうか…
職員にしっかり浸透しているでしょうか…

意外とこの部分が見落とされてしまっていることが多いです。

目標設定が曖昧だと組織は崩壊する

例えば、社会人のサッカーチームがあったとします。
このチームには、「全国大会優勝を目指しているメンバー」と「楽しくサッカーでできればいいと思っているメンバー」が両方いたとします。このようなチームが果たしてうまくまとまるでしょうか。

これは、私の実体験なのですが、当然、内部でさまざまな意見が飛び交い、うまくいかないことが多いです。

強くなりたいと思っているメンバーは、周りのメンバーにもそれを求めます。
例えば、「もっと走れるようにしないと勝てないから、タバコは辞めよう」とか、「練習の機会を増やそう」とか…。しかし、楽しくできればいいと思っているメンバーは、そんなことまでしなくもていいと思ってしまいます。

このように目標が違うメンバーが集まってしまうと、チームの存続すら難しくなります。

繰り返しになりますが、チームを考える上で、目標設定をしっかりしておくことは、とても重要になります。チームの目標が曖昧であると、人間関係のトラブルや、意見の対立などが多くなり、チームを維持していくことが非常に難しくなります。

介護施設では、その目標が「理念」や「方針」になります。しかし、この目標が曖昧だったり、理解や浸透ができていなかったりすると、メンバーはそれぞれの価値観や意見を言い合い、派閥の形成や人間関係のトラブルへと発展します。このような状態に陥ってしまっている介護施設はとても多いです。

実際に、介護現場の離職理由の第1位は「人間関係に問題があった」となっています。全ての人間関係の問題が「目標設定」によるものだと言えるわけではありませんが、大きな原因となっていることは間違いありません。

公共財団法人 介護労働安定センター 「令和元年度 介護労働実態調査結果について」

3つの「目標レベル」を理解する

次の3つの内、チームの目標設定はどれがいいと思いますか?
少し考えていただければと思います。※目標として適切かは少し置いておいて下さい。

A:利用者の目をみてしっかり挨拶をする。
B:利用者満足度調査で、90%以上目指す。
C:この施設から、日本を元気にする

答えは、どれも正しいです。
なぜならば、目標というのはチームのレベルや状況に応じて違ってくるからです。

つまり、チームのレベルによって、「目標のレベル」を使い分ける必要があるということです。
目標のレベルは、「行動レベル」「成果レベル」「意義レベル」の3つにわけることができます。
順に解説していきます。

行動レベル

行動レベルの目標設定とは、チームメンバーが具体的に取り組むべき行動の方向性を示したものです。選択肢の中でいうと、Aの目標になります。この場合、「利用者の目をみてしっかり挨拶をする」という行動そのものが、目標となります。

成果レベル

成果レベルの目標設定とは、チームとして手に入れるべき具体的な成果を示したものです。選択肢の中でいうと、Bの目標になります。この場合、「利用者満足度調査で、90%以上」という満足度が目標になります。

意義レベル

意義レベルの目標設定とは、最終的に実現したい抽象的な状態や影響を示したものです。選択肢の中でいうと、Cの目標になります。この場合、「この施設から日本を元気にする」という意義が目標となります。

目標レベルのメリットとデメリット

3つの目標レベルには、それぞれ特徴があり、どれが良い悪いというものではありません。

まず、行動レベルの目標設定には、それぞれのメンバーが自らの取るべき行動を明確にしやすいというメリットがあります。「利用者の目をみて挨拶をする」という具体的な行動目標は、誰もが取り組みやすく、すぐに行動にうつすとができます。
デメリットとしては、新たなアイディアが生まれにくく、行動目標以外のアクションは起きにくくなります。

意義レベルの目標設定には、チームにさまざまなアイディアが起きやすいというメリットがあります。
「この施設から日本を元気にする」とう目標の場合、
例えば、
・何か今までの介護施設の常識を覆した取り組みができないか
・YouTubeなどので、成功事例や取り組みを発信してみてはどうか
・介護業界のイメージを変えるために。スタッフのユニフォームを変えてみないか などなど…

幅広く考えることができるため、アイディアが生まれやすい状況となります。
デメリットとしては、自らの取るべき行動が明確にしにくいということがあります。「この施設から日本を元気にする」という目標が提示されても、すぐにそのためにどんな行動をすればいいのか思いつくメンバーは滅多にいません。この目標設定だけでは、メンバーが途方に暮れてしまうリスクもあります。

そこで重要になるのが、成果レベルの目標設定です。行動目標と意義目標の中間的な役割を果たし、現実的な目標設定をすることで、意義を見失わず、行動もできるという状態にすることが求められます。
この3つの目標レベルがしっかりと繋がっていることがとても重要であり、効果的な目標となります。

目標設定を見直す

ほとんどの介護施設では、施設や法人の理念や方針が掲げられています。全てとは言えませんが、この理念や方針のほとんどが「意義目標」にあたるものが多いです。
例えば、「共に生きる…」「自分らしい暮らしを…」「高齢者の尊厳を…」などです。

また、成果目標や行動目標にあたるものは、存在しないという施設も多いのではないでしょうか。当然、絶対に必要なものかと言われると、必ずしも必要なものではありません。

しかし、人数や規模が大きくなってくると、意義目標だけでは、抽象的でさまざまな捉え方ができてしまうこともあり、統率が取りにくくなります。また、新人職員や中途採用者が入った時に、この3つの目標があることで、やるべきことと目指すべきものが明確になっていることは、大きなメリットです。

「意義目標」「成果目標」「行動目標」の内容と役割をしっかりと理解していだき、現在の自分たちの組織の目標と照らし合わせいただければと思います。組織全体で再度見直し、現場からも意見を求め、新たに作成してみることも必要かもしれません。

その際は、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

☑ 組織(チーム)の活動の意義が明確になっているか。
☑ その組織(チーム)の創出すべき成果が明確になっているか?
☑ その組織(チーム)は推奨している行動が明確になっているか?
☑ その組織(チーム)では、意義、成果、行動が適切に接続されているか?
☑ その組織(チーム)が、活動する意義、創出すべき成果、推奨される行動を日常的に意識できているか?

有名なザ・リッツカールトンのゴールドスタンダードは、
意義目標や行動目標などの参考になると思いますので、よければ、ご覧になってみて下さい。

まとめ

今回は、介護施設における「目標設定」について解説させていただきました。介護施設では、さまざまな人材が働いています。常勤、非常勤、ベテランから新人まで能力もさまざまです。
まずは、目標をしっかり定め、目指すべき方向と、取るべき行動を統一しておくことで、判断基準が明確になり、現場での混乱やトラブルも防止にも繋がります。

また、「行動目標」は、時にメンバーを”作業”の奴隷にし、「成果目標」は、時にメンバーを”数字”の奴隷にするとも言われています。これは、介護業界では、ともて耳が痛い話ではないでしょうか。

介護現場では、日々、目の前の業務をこなすことでいっぱいいっぱいの状態が続くことも多いです。このような状態に陥ると、つい「なぜこれをしているのか」「これが何に繋がっているのか」という根本的な部分を忘れがちになります。

介護の本質を見失わないためにも、事業所の「意義目標」がしっかり設定され、浸透していることが重要です。そうすることで、メンバー1人1人が、生むべき成果や、とるべき行動について意思を持つことができるようになります。

繰り返しになりますが、チームを強くするためには、「目標の浸透」絶対条件となります。人手不足などで、時間の確保は難しい部分はあると思いますが、定期的な研修などで、理念や方針について振り返る時間を設けることも大切です。

また、理念を浸透させるためには、経営者や管理者の言動がとても重要になります。
本気で掲げてる目標を目指しているか、これが伝わらなければ、どれだけ良い目標であってもメンバーをその気にさせることはできません。トップの本気度が伝わることで、チームワークはより強固なものとなっていくでしょう。

監修者

小寺智久

介護経営コンサルタント。介護業界歴14年。現場の介護職員からスタートし、支援相談員、営業、施設統括、経営管理など、京都の大手医療法人の介護事業部でさまざまな業務を経験。特養、老健、グループホーム、介護付き有料老人ホームなどの施設経験と、100名以上の管理者・リーダーと関わってきた経験から、施設経営のサポートを行っている。